概要
幸三の姉で、売れない女優である千恵、田島の分家の夏秋が金を求めてゆすりをかける。しかしもう、田島家には金など残ってはいない。
幸次は、「親父が一体どの女を愛していたのか(自分のことを親父は愛していたのか)」にこだわり、幸三は秋幸の死以来、なにかが見えている。幸一郎は早紀とのあいだに跡取りができないことに負い目を感じている。
葬儀が終わったとき、村に不穏なものが漂いだす。それはきっと、秋幸の……。
田島の集落になぜかあるシェアハウス「シラ
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!犬死になんてごめんでしょう
生きる、死ぬ、犬のように、草原を駆けて、肉を屠り、子をなして、育てて、生かしたり、死なしたり。
閉鎖的な村落で起こった惨殺事件、きっかけは地元の名士の死だった。
彼らはなぜそこに集い、死に導かれたのか。
これがどういう物語なのか、ちょっと一言では表現できないですが、読んでいるうちにすべてわかると思います。命の重さも、尊さも、ふとした瞬間に吹いて飛ばされてしまう。漫然と生きているとつい忘れてしまいそうになりますが、ああ、自分は〇〇〇〇ために生まれてきたのか。って。命が尽きるその瞬間に、誰もが思い出すのかもしれない。
物語の中で生が踏みにじられる意味があるとしたら、きっとそういうことなんだ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!群像の影の光
自然美しい開放的な土地の空気が、閉鎖された人間関係によって体臭を持ち、また空気の中に住んでいる。
そんな印象を受けた。
体臭はいずれ意思を持ち、その土地に張り付いて暮らす人間の中に入り込む。自由に語り、思い、眠る。怒り笑い病み、祈る。
人間と人間の関係には、どのようなものにも影が落ちるものだけれど、その影は自然の理として常に光を孕んでいる。もちろんその逆も。
物語の中で影は闇のようにどろどろとした勢力をもち、暴力にまみれ、おぞましい景色を見せる。それでもやはり、常にその中にある光を訴えている。祈っている。
個人的にメモってコピってみんなに配りたい素敵な台詞が満載でした。ブギ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まるで中毒のように、後を引く。強烈な引力を持つ味わい深さ。
現段階で、まだ物語の半ばを拝読しているところです。
けれど、このストーリーがどう展開するかが興味深いことはもちろんなのですが、この作者様の創りだす作品の「空気」そのものが、なんとも言えず味わい深く面白い。そう私には思えます。結末など例えないとしても、この物語の空気だけでいつまでも楽しめてしまう。そんな不思議な感覚です。
山深いある村の、現代社会から隔絶されたような空気。古くからの有力者一家。その当主の死。彼が遺した子供達、その配偶者等々の生々しい関わり。
その一方で描かれる、自殺スポットとして有名な滝に吸い寄せられてきた若者たち。そんな彼らを住まわせる奇妙なシェアハウス。
山村の静かな無気…続きを読む