まるで中毒のように、後を引く。強烈な引力を持つ味わい深さ。

現段階で、まだ物語の半ばを拝読しているところです。
けれど、このストーリーがどう展開するかが興味深いことはもちろんなのですが、この作者様の創りだす作品の「空気」そのものが、なんとも言えず味わい深く面白い。そう私には思えます。結末など例えないとしても、この物語の空気だけでいつまでも楽しめてしまう。そんな不思議な感覚です。

山深いある村の、現代社会から隔絶されたような空気。古くからの有力者一家。その当主の死。彼が遺した子供達、その配偶者等々の生々しい関わり。
その一方で描かれる、自殺スポットとして有名な滝に吸い寄せられてきた若者たち。そんな彼らを住まわせる奇妙なシェアハウス。
山村の静かな無気力の中で、すっかり何かを諦めたように、それでいながら生々しい人間臭さを曝け出して暮らす人々。

彼らがどう絡み合っていくのかは、これから楽しみに拝読します。
ですが、物語途中のこの段階で、この物語の醸すなんとも独特な脱力感、無気力さ、人間臭さは、何か中毒のように後を引きます。この物語にまた立ち寄らずにはいられない、強烈な引力のようなもの。それを感じます。

このなんとも不思議に味わい深い世界を、どうぞ覗いてみてください。おすすめです。

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