生きる、死ぬ、犬のように、草原を駆けて、肉を屠り、子をなして、育てて、生かしたり、死なしたり。
閉鎖的な村落で起こった惨殺事件、きっかけは地元の名士の死だった。
彼らはなぜそこに集い、死に導かれたのか。
これがどういう物語なのか、ちょっと一言では表現できないですが、読んでいるうちにすべてわかると思います。命の重さも、尊さも、ふとした瞬間に吹いて飛ばされてしまう。漫然と生きているとつい忘れてしまいそうになりますが、ああ、自分は〇〇〇〇ために生まれてきたのか。って。命が尽きるその瞬間に、誰もが思い出すのかもしれない。
物語の中で生が踏みにじられる意味があるとしたら、きっとそういうことなんだと思いました。
自然美しい開放的な土地の空気が、閉鎖された人間関係によって体臭を持ち、また空気の中に住んでいる。
そんな印象を受けた。
体臭はいずれ意思を持ち、その土地に張り付いて暮らす人間の中に入り込む。自由に語り、思い、眠る。怒り笑い病み、祈る。
人間と人間の関係には、どのようなものにも影が落ちるものだけれど、その影は自然の理として常に光を孕んでいる。もちろんその逆も。
物語の中で影は闇のようにどろどろとした勢力をもち、暴力にまみれ、おぞましい景色を見せる。それでもやはり、常にその中にある光を訴えている。祈っている。
個人的にメモってコピってみんなに配りたい素敵な台詞が満載でした。ブギーバック!
現段階で、まだ物語の半ばを拝読しているところです。
けれど、このストーリーがどう展開するかが興味深いことはもちろんなのですが、この作者様の創りだす作品の「空気」そのものが、なんとも言えず味わい深く面白い。そう私には思えます。結末など例えないとしても、この物語の空気だけでいつまでも楽しめてしまう。そんな不思議な感覚です。
山深いある村の、現代社会から隔絶されたような空気。古くからの有力者一家。その当主の死。彼が遺した子供達、その配偶者等々の生々しい関わり。
その一方で描かれる、自殺スポットとして有名な滝に吸い寄せられてきた若者たち。そんな彼らを住まわせる奇妙なシェアハウス。
山村の静かな無気力の中で、すっかり何かを諦めたように、それでいながら生々しい人間臭さを曝け出して暮らす人々。
彼らがどう絡み合っていくのかは、これから楽しみに拝読します。
ですが、物語途中のこの段階で、この物語の醸すなんとも独特な脱力感、無気力さ、人間臭さは、何か中毒のように後を引きます。この物語にまた立ち寄らずにはいられない、強烈な引力のようなもの。それを感じます。
このなんとも不思議に味わい深い世界を、どうぞ覗いてみてください。おすすめです。
タイトル【オールザサッドヤングメン】と、キャッチフレーズ【神様はいますか? 残念ながら、留守です。生き残れるのはどこのどいつだ?】。
センスが良すぎてふとした時に頭に浮かび、あれ、最新話まで読んだっけ?とついついアクセスしてしまいます。
群像劇というのでしょうか。ああリアルな会話ってこんな感じだよな、と思わせる怒涛の会話劇が魅力です。
そしてリアルな会話には暗黙の文脈があり、読者に明かされない暗黙の文脈がじわじわと明らかになってゆく感覚がもどかしくも心地よい。
一見複雑に見える人間関係がちゃんと解きほぐされていくのは、個々の場面でフォーカスすべき人を絞り込んで描いているからかも知れません。
神の視点で語られる地の文や、何かを知っているらしいババアがどこかに語りかけている様子が、作品に不気味な気配をまとわせています。
その気配がストーリーに絡んでどのようなうねりになってゆくのか、追いかけるのが楽しみです。
煙がどんどん室内に満たされる感覚。って言っても、なにも伝わらないかもしれませんが、私はそんな印象を受けました。
人間味のある登場人物、と書いてしまうとなんだか明るい印象になってしまいますが、今作のタグにもあるように悪意も人間の一部で、そういった空気に惹かれてしまうのも、これもまた人間らしさかなって思いながら拝読しています。
なんて堅苦しいこと言っちゃうとアレなんで!
両津新吉大好きです。やっぱお巡りさんはこうじゃなくっちゃね!それと『おブンガク』も最高でした。
たぶんきっと、私が思っているよりもずっと多くの視点で小説の面白さが詰め込まれた作品だと思います。発見するたびに、こういう楽しみ方もできるよ、って脳ミソの使ってないとこが動き出す。
あなたの面白いもぜひ共有してほしい。
まだ追いつける。この年末年始にガバッとまとめ読み。おススメします!
兎にも角にも居心地が悪い。
本作を拝読している間、ずっと肌にまとわり付いてくるのが、そんな感覚です。
閉鎖的な山奥の村の空気、一触即発の人間関係、何よりも今の現実にそぐわない自分自身。
登場人物一人ひとりが抱える鬱屈や妄執が、混じり合い渦となって底なし沼へと引きずり込んでくる。
知らぬ間に、この怪作の虜になっていました。
村に君臨していた権力者を喪ったことで表面化する、血と家と金の泥沼劇。
元自殺志願者ばかりが住まわされるシェアハウスの、表の目的と裏の目的。
この二つの筋がどのように絡んでくるのか、あれこれ想像を働かせるのもまた一興。
現実離れした設定の、ともすればどこまでも重くも暗くもなる題材。
ですが、軽妙でリアリティ溢れる会話の応酬が、「自分のすぐ側にあるかもしれない、生々しい人間の物語」だと感じさせるのです。
自分の中身は未だオザケンが『今夜はブギー・バック』を歌っていた頃のままなのに、外側の殻は平成最後の空気を吸っているだなんて。
そういう類の、居心地の悪さ。
30〜40代ぐらいの人は特に、何かしら共鳴するものがあるはず。
物語はまだ途中。ここからどこへ向かっていくのか、非常に楽しみです。