概要
あるものは炎が降ったと言い、あるものは氷が侵蝕したと言う。
地を揺るがす振動がすべてを砕いたのだとも、天を衝くほど高い波がすべてを拭い去ったのだとも、言い伝えられるはさまざまだが、真相を知るものはいない。
瓦礫の世界を進みゆくふたり連れ。
ラクガキを現実に換える魔女と、神の子と呼ばれた青年の、旅の途中の物語。
著・眞城白歌
(旧PN・羽鳥さぁら)
Twitter:@Hatori_kakuyomu
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!「かみさまなんていない」孤独な少年と、乾きゆく世界に降り注いだのは。
雨のかみさまは白いクジラの姿をしている——。
そんなお伽噺のような語りから始まるのは、過酷すぎる世界。
その世界が元はどんな形を、気候をしていたのか、知るものはいない。
一滴の水すら、食料すら枯渇し奪い合い、生き物全てがただ生きることに必死な世界。乾いて干からびて、心さえも失いそう……そんな世界を優しい文体で見事に表現されています。
その砂塵と残骸だらけの大地を、ある時風変わりな二人が進んでるところから物語は動きます。
二人が出逢ったのは生きることにしがみつき、守るために孤独の中抗う少年。
その時少年が出逢ったのはなんだったのか。
降り注いだものは、巡り合った運命は、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読者もろとも、神様に逆らえないまま物語が始まります
神様というのは、人智を超えた存在で、人間がどうこうできるものではありません。
ですから、「生き残れなかった人たち」も、「何故か生き残ってしまった」兄弟も、どちらにせよ神様の課す運命に翻弄されてそうなったのだと思います。
そこが冒頭の文章によく出ていて、やわらかな語り口ながら、人間にはどうしようもないんだというゆるやかな絶望感が横たわっています。
このお話の主人公は、きっと魔女と神の子なのだと思いますが、わたしは、生き残りの弟を主人公に、青天の霹靂のように現れた旅人……という風に読んで楽しみました。
神話的で、色々な読み方ができると思います。 - ★★★ Excellent!!!壊れた世界を、癒す雨。さあ、空を見あげてごらん?
まず、「雨のかみさまは白いクジラの姿」という出だしから、「可愛い!」と頭の中で想像が始まります。空を往く白いクジラ。さぞかし悠々として壮観で、心が晴れ晴れする光景だろうな…。
でも物語の舞台は崩壊した世界。すべてが砂に還ろうとしているような乾いた過酷な環境。そしてそこには大切なものを守るために必死に命をつなぎ、ひとり戦う少年が。絶望と隣り合わせに生きていた彼は、ある日不思議な来訪者たちを迎えるのです。その来訪者たちが彼に見せた奇跡とは――。
荒廃した世界でありながら、色彩も鮮やかに浮かびあがらせる作者さまの手腕がみごとな作品。丁寧な言葉選びが生み出す軽やかな筆致と、心あたたまるファンタジ…続きを読む