「かみさまなんていない」孤独な少年と、乾きゆく世界に降り注いだのは。

 雨のかみさまは白いクジラの姿をしている——。

 そんなお伽噺のような語りから始まるのは、過酷すぎる世界。
 その世界が元はどんな形を、気候をしていたのか、知るものはいない。

 一滴の水すら、食料すら枯渇し奪い合い、生き物全てがただ生きることに必死な世界。乾いて干からびて、心さえも失いそう……そんな世界を優しい文体で見事に表現されています。

 その砂塵と残骸だらけの大地を、ある時風変わりな二人が進んでるところから物語は動きます。
 二人が出逢ったのは生きることにしがみつき、守るために孤独の中抗う少年。

 その時少年が出逢ったのはなんだったのか。
 降り注いだものは、巡り合った運命は、かみさまだったのか……それとも希望だったのか。

 神話のようで、ファンタジーの映画のようで。もしかしたら遠くないこの世界の未来のお話かもしれない。
 不思議で、残酷で、だけど散りばめられた深い優しさの見える物語。

 大好きな作品です。ぜひ彼らとこの世界を見聞きし、共に分かち合ってほしい。

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