クジラのかみさま

作者 羽鳥さぁら

201

75人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

 冒頭空飛ぶクジラという超常的存在を取り上げた上で、細かく「雨」を描写するこの作品だが、読み進めていくと、この作品はそれとは対極の「乾き」がメインの作品であることがわかる。
 雨と乾き、二つの正反対のものをいきなり描写し始めるので、最初は戸惑うことになる。しかし、さらに読み進めていくと、それは無意味な対比ではなく、意味のある比較だとわかる。
 構成力、文章力、発想力の全てに優れる完成度の高い作品だった。
 執筆お疲れ様でした。

★★★ Excellent!!!

 雄大な発想が細密画のごとき文章で美々しく語られる救出譚。
 幻想とも空想とも、あるいは厳粛たる現実とも思えるクジラは移動する天国であろうか、はたまた造られた機械なのだろうか。
 砂漠の砂粒一つ一つを指で砕き、更に小さくなった粒を石で砕くがごとき狂乱の太陽は本作を、否読者を焼き尽くし、それが故に主人公達の無私の奉仕を輝かせる。
 まこと本作において過酷な困難は人類愛の手に触れられるべき存在であり、その報いをもって読者の心の地平に豊穣なる麦畑を為す運命と言えよう。
 私もまた旅立ちたい。

★★★ Excellent!!!


神様が世界を見捨てたならば、そこはもう人間が住める場所ではないだろう。

カラカラの砂漠と灼熱の太陽だけが延々と続く世界。
何があってそんな世界へと変貌してしまったのか定かではないが、水も食料も無ければ乾き切った台地を濡らす雨すら降らない地獄のような場所。

飢えた獣が徘徊し、そんな獣達から兄を必死に守ろうとする弟の強さに「神様、早く来てあげてー!!」と強く願ってしまうほど。

冒頭で現れる2人の白髪の少年少女が不思議な雰囲気を漂わせており、彼らの言動にはどこか安心させられる安らぎを感じる。
この2人はおそらく神様ではないだろうが、死んでしまった世界に取り残された人々を必ず救ってくれる"神様の替わり"になり得る存在だろう。

まるでこれから滅びた世界を救うための大冒険に出かけるかのような、物語のプロローグのようなエンディングにファンタジー好きは興奮することでしょう。
続きがあるのなら、彼らの旅を最後まで見届けたいと、そう思えるような作品でした。

きっと彼らがいる限り、この世界は終わったりしないだろう。

★★★ Excellent!!!

神様というのは、人智を超えた存在で、人間がどうこうできるものではありません。
ですから、「生き残れなかった人たち」も、「何故か生き残ってしまった」兄弟も、どちらにせよ神様の課す運命に翻弄されてそうなったのだと思います。
そこが冒頭の文章によく出ていて、やわらかな語り口ながら、人間にはどうしようもないんだというゆるやかな絶望感が横たわっています。
このお話の主人公は、きっと魔女と神の子なのだと思いますが、わたしは、生き残りの弟を主人公に、青天の霹靂のように現れた旅人……という風に読んで楽しみました。
神話的で、色々な読み方ができると思います。

★★★ Excellent!!!

私はこの物語を、赦しの物語、そして理解の物語と解釈しました。

たとえば、神子と魔女と人間。
その存在は相容れない部分が多い。はとりさんは冒頭の蛇の例でそれを暗喩されています。

私たちの世界は七色でできている。
鮮やかで、豊かで、きれい。
だけどその色が時として、他の色を排除しようとする。自分の色と、自分が所属する色を守るために。

この物語は、全てを白として考えてみなさいと、そう語りかけているような気がします。
だから、誰もが安らぎの場所、生きていける場所を目指しているのだと理解しようと。

勝手な解釈であれば申し訳ありません。
隣で困る誰かを助けよう。
くじらの神様はそんなあなたに「涙」という雨を降らせてくれるかもしれません。

だったら世界は七色でもかまわない。
その方が、やっぱりいい。
優しさの詰まった、はじまりの物語です。

★★★ Excellent!!!

荒廃した世界を美しい文章で丁寧に書いた作品。
それでいて、そのストーリーは心温まる物であり、絶望ばかりでは無く希望がある。
クジラのかみさま、二人組の旅人、そして孤独と戦う少年。
彼等の行く末を全て見届けられる訳では無いが、そこには確かに希望がある。

私は普段もレビューは下手なのだが、今作は更に言葉が出ない。
ただ、強いて言うなれば自分では書く事が出来ないものを読んだとだけは、自信を持って言える。

★★★ Excellent!!!

まず、「雨のかみさまは白いクジラの姿」という出だしから、「可愛い!」と頭の中で想像が始まります。空を往く白いクジラ。さぞかし悠々として壮観で、心が晴れ晴れする光景だろうな…。

でも物語の舞台は崩壊した世界。すべてが砂に還ろうとしているような乾いた過酷な環境。そしてそこには大切なものを守るために必死に命をつなぎ、ひとり戦う少年が。絶望と隣り合わせに生きていた彼は、ある日不思議な来訪者たちを迎えるのです。その来訪者たちが彼に見せた奇跡とは――。

荒廃した世界でありながら、色彩も鮮やかに浮かびあがらせる作者さまの手腕がみごとな作品。丁寧な言葉選びが生み出す軽やかな筆致と、心あたたまるファンタジーの両方を楽しみたいなら、ぜひ、この物語をご覧ください。
ミステリアスかつ愛嬌たっぷりのキャラクターたちも楽しめますよ。
ちなみに私はやっぱり、タイトルにもなっているクジラさんがお気に入りです。

★★ Very Good!!

きれいだけど退廃した残酷な世界。
そんな世界に僅かながら生きる人のただ生きたい、救ってほしいという単純な願いを持ちながらも、過酷な現実を見つめるしかない少年の必死な思いを感じました(合ってるかな?)
果たして少年の願いは叶うのか。どんな結末を迎えるのか。それをここで伝えることはできませんが、きっと最後は少しだけ、あなたの心は優しくなっているはずです。

★★★ Excellent!!!

枯れてしまった世界、普通は絶望しか感じない筈なのに何故か優しさと美しさがある、というのが率直な感想です。
この気持ちを何と表現したらいいのでしょうか?私には言い表す事ができません。
過酷な環境が描かれているにもかかわらずそれらは全て柔らかくマットな質感を持っているように感じました。

絵本を読んでいるかの如く、風景が想像出来たのも驚きでした。厚みがあるのに読みやすいのです。

気になったらすぐに読む事をオススメしたい作品です。

私にはとても真似できない……

★★★ Excellent!!!

幻想的。魅力的。まるで絵本を文字に起こしたみたい。
読んで最初に抱いた印象がその三つです。

描写がね、凄く丁寧で、センスあるんです。
誰だってちょっと読めばすぐ、この物語の世界に入り込めることでしょう。過酷で、命がけで、だからこそその幻想的な描写が際立つんだと俺は思う。世界は厳しくも美しい。柄にもなくそんなこと思いました。

そんな世界観の中で、タイトルにもなっている「クジラのかみさま」はある種の象徴のように扱われているようで。言い伝えのような優しい紹介からその存在をぼんやりとイメージさせて、最後には登場人物の少年が抱いているそのイメージそのままに堂々と現れてくれます。
ここでまた筆者の描写力が生きるわけですよ。いやもうね、名前のとおり。かみさまが来た。俺は本気でそう思った。救いに来た。
少年が問いかけるよりもずっと前に俺は「ああ、彼らは神様の遣いだったんだなぁ」なんてことを呟いておりました。

子供に読み聞かせるおとぎ話のような、絵本のような。
それは決してチャチなもんじゃなく、それだけ心を鷲掴みにする魅力と強い世界観があるということです。ファンタジーの世界はいつだってこういう魅力がなくっちゃいけないと思う。

最高でした。

★★★ Excellent!!!

荒廃した世界で、追い詰められていた非力な人間に対して手を差し伸べる者が現れる……
肉体的な危機に瀕していた人が怪我を治してもらえる……
枯れた砂漠で水も十分にない、そんな時にクジラのかみさまが雨を降らせる……
あらゆる面で「救いのある物語」だと感じました。短いのに世界観は詰まっていて、そこにきちんとテーマがある。
読みやすい作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

くどくなく、しかし語りすぎるわけでもない特徴的な表現で作り上げられた世界観は、十分な想像の余地を残しつつ、わかりやすく読者の脳内に再現されることでしょう。そこに生きる人物たちにも、きっと生命が灯るはずです。

続きが読みたくなる、良い作品でした。

★★★ Excellent!!!

どんな言葉を並べても、僕はこの物語を表現できない。レビューしたいのに、言葉が出ない。はっきり言って脱帽です。
豊富なボキャブラリーにそれを詩うように書き上げる類稀なるセンス。短い中でそれが遺憾無く発揮されている。短編だって侮れない。
荒廃した世界。幻想的な表現の数々。ここまで細かく描写できるのはただただすごいです。僕は確かにこの物語の世界を見た、と実感せざるを得なかったです。
まるで童話のような絵本のような色鮮やかな物語。短い時間の中で物語に没入したいならオススメの一作です。