大いなる恵みの遊泳

 雄大な発想が細密画のごとき文章で美々しく語られる救出譚。
 幻想とも空想とも、あるいは厳粛たる現実とも思えるクジラは移動する天国であろうか、はたまた造られた機械なのだろうか。
 砂漠の砂粒一つ一つを指で砕き、更に小さくなった粒を石で砕くがごとき狂乱の太陽は本作を、否読者を焼き尽くし、それが故に主人公達の無私の奉仕を輝かせる。
 まこと本作において過酷な困難は人類愛の手に触れられるべき存在であり、その報いをもって読者の心の地平に豊穣なる麦畑を為す運命と言えよう。
 私もまた旅立ちたい。

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