壊れた世界を、癒す雨。さあ、空を見あげてごらん?
- ★★★ Excellent!!!
まず、「雨のかみさまは白いクジラの姿」という出だしから、「可愛い!」と頭の中で想像が始まります。空を往く白いクジラ。さぞかし悠々として壮観で、心が晴れ晴れする光景だろうな…。
でも物語の舞台は崩壊した世界。すべてが砂に還ろうとしているような乾いた過酷な環境。そしてそこには大切なものを守るために必死に命をつなぎ、ひとり戦う少年が。絶望と隣り合わせに生きていた彼は、ある日不思議な来訪者たちを迎えるのです。その来訪者たちが彼に見せた奇跡とは――。
荒廃した世界でありながら、色彩も鮮やかに浮かびあがらせる作者さまの手腕がみごとな作品。丁寧な言葉選びが生み出す軽やかな筆致と、心あたたまるファンタジーの両方を楽しみたいなら、ぜひ、この物語をご覧ください。
ミステリアスかつ愛嬌たっぷりのキャラクターたちも楽しめますよ。
ちなみに私はやっぱり、タイトルにもなっているクジラさんがお気に入りです。