3日目の2
唐突だが、筆者の趣味はラーメン屋巡りである。
しかしラーメンが好きかと言われれば、前項でも触れた通り胸を張っては答えられない。ひょっとしたら自分はラーメンが好きなのではなく、ラーメンが好きな自分というキャラ付けがしたいだけなのかもしれない。お前はアイデンティティに悩む高二の男子か。
そういえば高校生の頃の自分はとにもかくにも痛々しいことこの上なかった。今でも思い出すたびに丸ごと書き換えたくなる。当時の自分は強すぎる自己顕示欲ゆえに様々な失敗を――この話はやめておこう。
戻す。筆者はラーメン屋巡りが趣味である。最盛期は週四、五でラーメンを食べ、写真とレビューをツイッターに上げるのが習慣になっていた。
ふと思ったが、ここまでやっておいてラーメンが好きだとはっきり言えないのは明らかに狂っている。好きの定義を考え直す必要があるかもしれない(そういうところから考えている時点で何かがおかしいのだろうが)。
今回の旅でも、ここでしか食べられないラーメンを食べようという指針はあった。だが港付近にある著名な店がよりによって定休日になっており、食べる前から消化不良(※11)という滑稽な事態に陥っていた。
そういう経緯から、三日目はご当地のラーメンを食べようということで店を探していた。隣の市、というか隣の県に商店街があり、周辺に何軒かラーメン屋があるようなのでそこをひとまずの目的地として選んだのだった。
世間が夏休みの間忙しなく働いていたため、飲食店のハシゴなどという一大娯楽企画は久々だった。しかも夏は食欲の減退が著しく、胃袋は明らかに衰えている。最低でも二軒行ければいいかなといった具合だった。
そんな復帰を兼ねた一戦は、地方ならではのコスパの前に辛くも敗れ去った。
並の量が一杯で六〇〇円という価格設定をどう思うだろうか。地方の個人経営店で考えればごく一般的な値段である。これで味が外れなければ満足度は充分といえる。
結論から言って、二軒とも美味かった。一軒目はややあっさりで親しみやすい豚骨で、二軒目は具材豊かな醤油豚骨。この具材豊かなのが胃に刺さった。
これは六〇〇円で出していい量ではない。二郎系でもない限りは。
――食欲の秋に備えて胃袋を鍛え直さなければならない、か。
そう唸らざるを得ず、じっくり時間をかけて完食。
その後余った時間で腹ごなしに散策したのち、カフェでバニララテを飲みながら執筆。電車で来た道を引き返し、昨日断念した有名店を目指した。
※11 うまく言ったようであるが、別にうまくない。そもそも食べていないのだから。
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