2日目の5


 ホテルに着いてからの記憶がない。


 嘘だ。部屋に案内されてクソ重い荷物を放り投げてからの記憶がない。


 肩も脚も疲弊しきっていた。そもそも運動という言葉が筆者の私生活とは縁遠い。虚弱だから運動しないのではなく、運動しないから虚弱なのだという自己分析を先程汲んだ湧水で胃に流し込んだ。すっかりぬるくなっていたので冷蔵庫にぶち込んだ。二時間後に電源が入っていないことに気がつき落ち込んだ。


 そこからの記憶が本当におぼろげで鮮明さに欠けるのだが、とりあえず地下の温泉には入った気がする。よりにもよって関西にある某私立大学のよく分からない横文字サークルがやってきていて、このウェイウェイ野郎共疾く失せよと心うちで悪態を吐いた(※9)覚えはある。


 とはいえ数年前までは自分も寄りであったので、あまり憎しみを向けすぎると自らの首を絞めることになりかねない。そんなわけで彼らについての記憶はツイッターでサークルを検索し内情を探った後に消去しようと思う(※10)。


 到着時間が半端だったのもあって、気がつくと夕食を頂く機会を逸してしまった。それを見据えていたわけではないが、電車待ちの間にコンビニで買ってきたチョコチップメロンパンと野菜ジュースで腹を満たした。これはこれで旅情があって以下略。


 二日目にしてこの疲労感はまずい。紀文を書き、明日の行き先を考え、帰りのルート検索を繰り返しているうちに日付が変わった。テレビを観る元気もない。少しだけつけてみるとキャプテン翼のアニメがやっていた。武蔵FC戦。小学生の頃にゲームをやり込んだ筆者にとって、三杉くんはとても思い入れのあるキャラクターである。病持ちの天才プレイヤー尊い。


 結局執筆もおざなりにそのまま就寝した。当初の目的の一つであった「執筆のための旅行」という意識も、眠気には勝てない。


 そして翌日、残された時間が思った以上に少ないという事実に直面することとなる。






※9 やや誇張気味であるが、概ね本心。ただのやっかみである。

※10 消すのはサークルではない。自分の記憶である。それもおかしいか。

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