12月 忘年取材旅行 I川

現実から逃避した先で現実と直面する話




 サンダーバードの自由席から田園風景が見える。




 僕はいま滋賀にいる。だがあと一時間もしないうちに通過して福井に入るだろう。当初の予定では乗るつもりのなかった特急から見る景色は、想定以上の速さで過ぎ去っていった。



 あほだ、と思う。



 きちんと計画を練っていれば不要だったはずの出費。出発してからルートを決めるという「いつものパターン」は、ライブ感があるとはいえど無謀だ。結果、チェックインの時間に間に合わないことが後から判明して特急に乗らざるを得なくなった。


 補足しておくと、これは青春十八きっぷでの旅である。特急電車の乗車券は別途で支払わなければならない。要は「普通・快速列車を乗り継ぐ」という今回の旅の主旨に合わないのだ。思わぬ誤算、なんて言葉で済ませてよいものではない。


 とはいえこうしたアクシデントも旅の醍醐味(と言い聞かせないと気分が落ち込む)。余計に支払った乗車賃も貴重な経験をさせてもらったと思えば納得できる(ということにしないと自我が崩壊する)。


 それに特急列車でないと今のようにPCを安定させつつ執筆することができないので、金を払って執筆場所を確保していると思えば――やっべ酔ってきた。



 田園風景がいつの間にか森林に変わっていた。


 すごく山奥である。



 車窓から見える景色によって旅情が芽生えるのを待っているが、なかなかこみ上げるものがない。トンネル入った。長い。電波届かない。ここはどこ……?


 本当にただ速く移動するための乗り物なのかサンダーバード。速さだけが取り柄でもいいのかサンダーバード。



 トンネルを抜けると、やはり山奥であった。


 せめて紅葉していてほしかった。途中ちょっとだけ寄った山科とかいい感じでしたよ? そこから引き返したりせずあのまま快速で移動しておけば……いや過ぎたことを言うのはやめよう。宿泊先に着いてからまた後述しよう。




 ともかく、こんな感じで行き当たりばったりの旅をしています。


 だって、どこに行っても同じですしね。


 行き方は……もうちょっと考えるべきかな。

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