ぶらり途中下車など幻想だという話


 旅行三日目の帰り道にこの文章を書いている。


 二日目の大半は他の原稿に費やした。そもそも旅の目的の一つは公募投稿用の作品の追い込みだったので、紀行文に費やす時間は限られていた。紀行文は旅を振り返りつつ、気分転換にもなるのでもっと書きたいのだが、散文もあまり書き過ぎると本筋に影響が出てしまう。楽しいこともほどほどがよい。


 簡単に二日目をまとめると、旅館からまったく出ることなく原稿作業にかかっていた。つまり観光らしいことをこれっぽっちもしていない。温泉浴場と客室を行き来し、ぽちぽちとキーボードを打っていた。


 あとはツイッターをしていた。詳しくは筆者のアカウントをご参照。


 紀行文なのに詳細はSNS任せ。とても斬新ではないだろうか。


 そういうわけで二日目はほぼ引きこもりの缶詰状態で過ごした。しかし三日目は一転、七~八時間に及ぶ普通列車乗り継ぎの旅となる。それは現在進行形である。



 ときに青春十八きっぷといえば途中下車し放題のイメージを持たれるかもしれないが、このきっぷの本領である「どこまで行っても同じ値段」を発揮したい場合、途中下車はあまりにもリスキーである。それはここまでの散文的失敗談を読まれた人であれば理解していただけるだろう。


 単純に一度途中下車をすると、次の電車が来るまで約二十分から三十分、長いと一時間以上待つことになる。駅の周辺を散策するならそれでもよいと思われるかもしれないが、何もないところほど運行ダイヤの密度が低い。それはもう反比例的に、降りたいと思える場所ほど待ち時間が長いのだ。


 なので僕は、この切符を用いて途中下車をしたことがほとんどない。


 ほとんどない、というのはつまり酷い状況を経験したということである。


 もしこれから件の切符を購入し、どこか遠くへ出かけたいという人がいるならば、気をつけてほしい。何もない所で降りたら本当に何もないし、降りたいと思える所で降りたら目的地には辿り着けないし、スマホの電池は足りなくなる。


 とはいえ、そういうアクシデントも含めて旅を楽しめるなら、いくらでもチャレンジしてもらえればいいと思う。


 かくいう筆者も、今まさに電車が琵琶湖を横切っていて、降りたい気持ちがマッハである。


 まあ、降りたらもれなく家には帰れないのだが。

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