残された時間

 話し合いから三日がたった。ヨルの話によると、残された時間は長くて一週間程度だそうだ。

 

 「ホシさん、私と交換日記でもしましょうか。思い出になるでしょう?」

「そうだな。」


 「ヨル、久しぶりにハーブティーでも淹れない?」

僕は、庭の薬草が伸びたのを見やった。

「素敵!」

お茶を淹れるだけなのにヨルはとても嬉しそうに言った。


 「お!きれいに晴れていそう!」

ヨルの機嫌のよさそうな声に僕は、空を見上げた。

 空は、僕とヨルの別れが近づいていることなんて、なんてことでもないというように青く澄みわたっていて、僕は、その眩しさに目を逸らした。

 

 「これ、どんな色ですか?」

「え?」

僕は、訳がわからず、聞き返した。花は鮮やかな黄色で、とても分かりやすいのに。

「困ったことに、最近、色が青いベールがかかったようにくすんでみえてるの。」

ヨルは、人差し指をピンとたてて、先生のように言った。


 台所に、ふんわりと薬草の香りが上り、ヨルはそれを丁寧に吸い込んだ。「ねぇ、今どんなきもちですか?」

「どんなって?」

「その、私と、お茶をいれて。」

「しあわせだよ。だけど一方でヨルが僕と台所に立つなんてことなかったから別れが近づいている感じがしてやっぱり、少し寂しくもあるけどね。」

「お茶をいれるだけなのに。」

「うん、お茶をいれるだけなのに。」


 ヨルの質問が増えたのはきっと、人間の思考を保つためなんだろう。それも、僕のために。そう思うと堪らなくつらくて、僕は、隣に眠るヨルを見ていた。

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