第15話

 ヨルは、瞳のなかに揺れる金色を増やしていくのと共に、どんどん静かになって、しまいには、ちっとも椅子から立ち上がらなくなってしまった。

 朝、僕が起きると既に彼女は定位置に座っており、窓の外を見つめていた。昼は、カーテンを閉めて、夜も、そこに座り、星を見上げていた。

 「ヨル、」

僕が声をかけると、ヨルはかくんっと、首を折り曲げた。

「今、君はなにを考えてるんだ?」

ヨルは、わからない、とでも言うかのように首を傾けたままで僕の目を見つめた。

 光はなく、銀河のような金色の渦巻く彼女の瞳に僕は、いたたまれなくなり、ヨルの両目を手でふさいだ。

 ヨルは、僕の手を放すと、また、窓の方に向き直ってしまった。 

 「僕のことを恨んでいますか?」

「魔法が解けたら君はいなくなりますか?」

「すぐに出ていってしまいますか?」「君を放したくないと思うことは間違っていますか?」

 僕の気持ちが、ヨルにぶつかることはないだろう。多分、今のヨルにどんな言葉をぶつけてもそれらは彼女の頭をすり抜けてしまうだろう。

 ヨルは、それだけ透明なのだ。感情をなくし、身体という容器に閉じ込められていることを忘れ、平穏に過ごすためには感情をなくすことが一番、効果的であることに、ヨルの魔法の部分が気づいてしまったのだろう。

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