第16話

 「わっ。博士!!まだ、これ解体してないんですか?!」

僕の家を訪ねてきた魔法使いの、ヨン君は、窓枠に肘をついて座るヨルを見て顔をしかめた。

「解体なんて言わないでくれよ。」

僕は、濁った様な瞳のヨルをちらりと見た。

「いや、だけど、このままだと」

ヨン君は、僕から目をそらして、頭の後ろを掻いた。

「その、魔法が、…腐食しますよ。」

ヨン君は僕の顔をうかがうようにして見つめた。

「…腐食?」

「はい。」

ヨン君は、僕の一言にうなずいて、長ズボンの裾をめくった。そこから、覗く脚は、人のものではなかった。

「僕、昔スポーツしてたんですけど、事故で怪我しちゃって。魔法で治したんです。」

義足を見下ろすヨン君の目は、ひどく悲しそうだった。

「そしたら、やっぱり魔法には耐えられなかったんでしょうね。魔法は、閉じ込められた檻が狭いせいでこわれ始めて、僕の脚も魔法を解いた瞬間腐食してしまうと。」

いやー、困った話ですよね、なんて笑いながらヨン君は、ヨルの方を見た。「このままじゃ、二人ともつらい思いをしないといけなくなりますよ。」

僕は、ヨルをみた。

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