お花畑
ヨルは、花が好きだった。ヨルが僕の庭のたくさんの花を一個一個丁寧に摘むのを見て、彼女はバラが好きだったことを思い出した。
摘んだ花をきれいにまとめて、僕の元に戻った少女は、僕に微笑みかけた。
「これで、部屋を飾りましょう。」
花束に、バラがないことに気がつき僕は聞いた。
「バラはいいの?」
ヨルは手元の、小さく愛らしい花達を見つめた。
「バラは、きれいだけど、私はこの子達のほうが好きだから。」
僕は、彼女にそっくりにしたはずの彼女がバラを持たないことに違和感を感じながらも、そんなヨルを愛しく感じていた。
彼女は、見た目こそ彼女に瓜二つだったが、﹙なんせ、僕がそうしたから。﹚中身は彼女とはちっとも似ていなかった。
「ホシさん。」と、ヨルに、純粋でまっすぐな笑顔を向けられる度に僕は、心地よさを感じた。
夜、食器を洗っていると、ドアが空いて、ヨルが顔を覗かせた。
「眠れないのか。」
「うん。」
僕は、ヨルにココアを淹れてやった。
甘い香りと共にふわりと立ち上る湯気に、ヨルが目を輝かせた。
「ねぇ、ホシさんは今いくつ?」
「19だよ。それがどうかしたのか?」
「私たち、そんなに変わらないの
よ。」
ヨルが、愛らしい顔に似合わないくらい、大人っぽい表情をした。
「そうかな?」
ヨルは、寂しそうな目で僕を見た。
「ホシさんは、私のこと好きじゃない?」
認めたくはなかったが、僕は、彼女ではないヨルが好きだった。僕は、ヨルを抱きしめた。
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