欠陥

 認めよう。僕は、ヨルのことが好きだ。彼女のクローンである容れ物ではなく、ヨルという一人の女性が好きだった。

 その事を認めてから、ヨルはますます愛らしくなった。

 

 あっという間に、18歳になったヨルの、女の雰囲気、というようなものに僕は、ますますぞっこんになり、ヨルも、まんざらでもないようだった。

 「お嬢さん、今夜も一曲踊りませんか?」

夕食後に二人で踊るのが日課になっていた。あのときとは、少し違うヨルは

窓から、さしこむ夕日に照らせれ妖艶な唇をキラキラとさせながら、美しくまわるのだった。

  

 「ヨル?」

明くる朝僕は、ヨルがなにかを見るようにうつむいているのを見た。

 ヨルが、僕を振り向いた。ヨルの持つノートと、ヨルの濡れた目で、それがなにであるかを悟った。

「私は、彼女の代わりの、人形ですか?」

歳を重ねるごとに、青が濃くなった瞳から涙をボロボロとこぼしながらヨルは言った。

 僕は、日記の存在なんてすっかり忘れていたのに、まさかヨルがそれを見つけてしまうとは思いもしなかった。

 「違うんだヨル!」

「それ以前に、どういうことですか?魔法の水ってなんですか?私はなに?」

ヨルは、自分の体を、なにかおぞましいものであるかのように、ぎゅっと掴んだ。

 「ヨル、聞いてくれ。落ち着いて話そう。」

「やだ!来ないで!さわらないで!」

一目で、恐怖ととれるヨルの表情に僕は、ヨルの方に伸ばしかけていた手を下ろした。

「ごめん。ヨル...ごめん...」

僕は、床にへたりこんで泣く彼女に触ることもできず、ただ、少し離れたところで謝ることしかできなかった。

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