第11話

 さぁぁぁあっと、雨の音がして僕は、あわてて洗濯物を取り込んだ。

 ヨルは、雨に濡れるのもかまわず庭に立っていた。

 しとしとと静かに、でもなければ、ざばざばと、バケツをひっくり返したようでもない、上品かつ、どこか野蛮な感じがする雨にヨルは、静かに打たれていた。

 「ヨル、風邪を引くからなかに入らない?」

僕が、洗濯物をすべて取り込んで、窓から声をかけると、ヨルは、にこりと微笑んだ。

「音楽を流してくれない?」

ヨルは、僕の一言など気にしていないようだった。

「風邪をひいても知らないよ?」

「どうせ、風邪なんてひかない。魔法使いだから。」

ヨルは自傷気味に笑った。

 僕は、音楽を流し、いつかのヨルのように窓に肘をつき外を見た。

 ヨルは、雨に濡れながら、オペラ座の彼女の得意曲を踊った。

 ピアノの音色と、雨の音が絡んで、心地よかった。

 

 ヨルの姿が、雨で少し霞み、僕は、泣きたいような気持ちになった。

 

 美しい女神を、愛らしいヨルを、失いたくないと思うことは間違っていますか?

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