ヨルの魔法
ヨルの、おかしな行動にはムラがあった。奇妙なことをしたと思えば、すぐにまたまともに見えることをしたり、隠れてグズグズと泣いたと思えば、ヘラヘラと笑ったりした。
「ヨル、今がつらい?」
「いいえ。これも定めなのよ。」
ヨルは、この間とは違って悲しいかおはしなかった。
「定めって?」
「私は、もともと人形としてつくられたんだもの。仕方ないわよ。このまま閉じ込められたままでいるのがただしいのよ。私なんて魔法の一部よ。欠けてもなんら問題がないわ。」
夜風にふかれたヨルの髪が彼女の頬に張りつくようにしてまとわりついたが、ヨルは気にしなかった。きっと身体というのは魔法という概念である彼女を閉じ込めている容れ物にすぎなかったから。
「ヨル、今、なにを考えてるの?」
僕は、たまらなくなってきいた。ヨルは黙ったままだった。
僕は、ヨルの横顔を、頬を、前髪の先を、青っぽく染めながら、夜が、空を侵食するのをボーッとみていた。
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