概要
儲け話を聞かされて同業者たちと赴いた街は、戦時中の激戦区――今は無法者たちが占拠する廃墟都市だった。
差別や迫害にさらされながら過酷な戦いを続けるくず鉄拾いたち。それでも生きる意味を求めて、少女は愛銃である散弾槍を手に取る。
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……ねえ。
なんだい。
私たちは本当に奪うことしかできないのかな。
さあな。老いぼれの考えが手がかりになれば好いんだが。――私の云いたいのは本当に分け隔てなく与えることができるのはそれこそ神様だけってことだよ。私たちがある集団から奪っているのは確かだがそれを通して他の者たちに与えてやっているのもまた確かなことだ。結局のところ人間なんだからね。無から有を生み出すこと
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!絶望と死体と凄惨な記憶転がる瓦礫の世界がなぜこんなにも鮮烈で切ないのか
どうかみなさん、私と一緒にこの圧倒的世界を旅してください。そして魂を心臓ごとわしづかみにされる感覚を味わってください。このレビューを読んでいるみなさんと一緒に、読んだ後の気持ちが洗濯機みたいにぐるぐる引き込まれて出られなくなるような感覚を共有したい。ぜひ共有させてください!そんな作品です。
廃墟と鉄さびと汚れたコンクリートと黒い鳥と真っ赤な外套。すべてを象徴する冒頭シーン。
触れがたい「過去」の痛みを愛でるかのように旅する主人公のアリサや、彼女をとりまく少女たちの渇き。
彼女たちの強さは、もちろん腕力に基づくものではないし、秘められた能力とか莫大な魔力とかでもない、愛とか恋とかいう簡単な言…続きを読む - ★★★ Excellent!!!酷たらしく血生臭く退廃的で悲壮感漂う世界に美しく
屍肉漁りと揶揄されるスカベンジャー、アリサが散弾槍を片手に戦争で滅んだ世界を旅しながら過去を一時的に覗ける再生機で、 “先客” となった原因を盗見みし、それを遺物として拾い上げていく物語です。
酷たらしく血生臭く退廃的で悲壮感満ちる世界。死がすぐ隣にある社会の中で擦れながらも純粋さを残し、情熱という幻想を捨て藻掻き生きる少年少女達。
汚く淡く儚く生きる者達。
生きる欲にまみれた者達
死をどこかに置いてきた者達
美学を持ち崇高に生きる者達
その全てをグロテスクな現実が等しく死を与えていく過程を見事に美しく描き切っていると感じます。
とてもポストアポカリプスと一言で言い表せ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!残酷でグロテスクな末世で、人間の魂が儚くも美しく光る。
読み始めた時、血まみれのマチェットが読者の頭に浮かんで続きを読むのを躊躇う人もいるかもしれないが、お願いだから続きを読み進めてほしい。読み進めるうちに気づくはずだ。その淡々としていながら残酷でグロテスクな描写は、この世界において目を背けるにはあまりにも普遍的でそこら辺に転がっている空き缶のようにありふれたものなのだと。
この作品はコーマック・マッカーシーの描く荒野でパサパサに乾いた血だまりの中に、ドミトリー・グルホフスキーの地下鉄の冷たさと人間の飽和しぶくぶくに膨れ上がって腐り始めた末世が溶け合い、そこに繊細で弾いたら壊れてしまいそうな情念、信義、哲学が逞しくも醜く、儚く生き足掻いている。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!苦渋の選択
まず初めに、吹き溜まりで光るモノを見つけたような気分でした
綺麗事ではどうしようもないシビアさ、誰もが自分や誰かのために奪い与える、どちらにも事情があり、それゆえにやるせない気持ちになる苦い味
これはポストアポカリプス特有の登場人物たちの自由意志の少なさがそれを強調しおり、難しいテーマを上手くまとめられていたと思います
現実においても、こうしないと自分や身内に損害が及ぶ、しかしそうすると、他の誰かが割を食う、という苦渋の選択を迫られる場面があります
この世界の登場人物はそれぞれのやり方で、この選択に折り合いを付けたり、気持ちをぶつけたりして、とても人間臭さのあるキャラクターたちでした
中でも…続きを読む