苦渋の選択

まず初めに、吹き溜まりで光るモノを見つけたような気分でした
綺麗事ではどうしようもないシビアさ、誰もが自分や誰かのために奪い与える、どちらにも事情があり、それゆえにやるせない気持ちになる苦い味
これはポストアポカリプス特有の登場人物たちの自由意志の少なさがそれを強調しおり、難しいテーマを上手くまとめられていたと思います
現実においても、こうしないと自分や身内に損害が及ぶ、しかしそうすると、他の誰かが割を食う、という苦渋の選択を迫られる場面があります
この世界の登場人物はそれぞれのやり方で、この選択に折り合いを付けたり、気持ちをぶつけたりして、とても人間臭さのあるキャラクターたちでした
中でも異彩を放つのが、アリサの父親、こんなどうしようもない世界で、自分の掲げる信条に忠実な姿は美しいと同時に気味悪さを持っている、そして、この父親の存在があるからこそ、物語に奥行きが生まれていると思います
文章に関しては、目から鱗で、多くの人が使う「」を一切使わず、けど、しっかり登場人物たちが会話している
「」を一切使わないことで、登場人物たちも世界や背景の一部として溶け込んでおり、場面を切り取ってるのではなく、世界を描写しているように思えました
また、グラデーションで話が展開するため、滑らかに話が追え、すみからすみまで、物語に浸れました
長文になりましたが、最後に改めて、この作品に出会えたことに、感謝をしたいと思います
本当に面白い話をありがとうございました

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