ライトファンタジーは数あれど。
ここまでの本格ファンタジーを読めるとは、思わなかった。
例えるなら上橋菜穂子先生の作品を読んでいるような。
チートはない。
これまで自分が積み上げてきたものを頼りに。今できる力を注いで。それ以上の怒涛の展開に飲み込まれそうになりながら。
何より、練り込まれた設定もそうなのですが。
大陸の土、風の香まで感じそうな筆致に息を呑みます。
傭兵にして、魔術師の彼女視点で見るこの世界の真理。
作者様の「王女様は妄想がお好き」と合わせて読むと、なお楽しめます。
人間臭くて。
完璧じゃないから。
だから愛しい。
そんな人たちが、全力で運命を切り拓く
そんな物語なのです。
乗り遅れないで。
「今」を生きる全ての人に、きっとこの物語は突き刺さる。
硬派な「本格ファンタジー」なんですよ。これ。女性キャラが出てこないというわけではないですが、全面に押し出されてるのは「男の世界」、「硬派な世界」なんですよ。ほんと、読んでるだけでしびれるシーン盛りだくさんです。
「呪いで倒れた主君」、「奪われた魔導書」。物語の序盤から胸ワクワクのキーワードが目白押しだけではなく、ストーリーの骨格も「男二人」で「影に隠れた巨悪」に挑む的な感じで、もう「たまらない」、垂涎の「男の世界」なんです。
ということで「硬派」な「本格ファンタジー」なこの一作、是非読んでみませんか?あ、言い忘れていましたが、ちゃんとヒロインはいます。でも、「男」キャラに完全に押されちゃってますw
レーヴェ王国の第二王子に仕える近衛騎士アーネストと、魔法使いベアトリクスの弟子エディ。
かたや呪いに倒れた主君を救うため、かたや奪われた魔導書――第二王子を襲った呪いの源でもあるそれを取り戻すために。
それぞれの目的のため二人は手を組み、王国を蝕まんとする陰謀と対峙する――
ここしばらく自分が接する機会のなかった、清々しいほど王道の西洋風異世界ファンタジーでした。
とても好きなやつでした。ごちそうさまです。
あらすじだけだとなんとなーく女っ気のない物語のように見えますが、私的には本作のヒロインが作中のキャラクターの中でとりわけお気に入りです。
彼女、特段美少女だとか美貌だとかいう形容が目立つわけではない印象なのですが、しかし何となく文章全体の雰囲気から、美貌のお嬢さんなんだろうなぁというのが伝わってくる感じで。
そうした、世界の空気、明度、肌触りみたいなものが伝わってくる――我々の世界とは縁もゆかりもない異世界だけれど、物語を読み進めてゆく中でそれらを肌で感じられる、そうした上質な文章でつづられた物語です。
現在完結済みの第一部は分量的にもサクッと読める分量なので、異世界ファンタジーがお好きな方は是非にどうぞ。