第16話 腸内フローラとサラダ


卵焼き、

鮭のバター焼き、

白米、

お味噌汁。

ーーそして、サラダ。

ブロッコリー、レタスに千切りキャベツ。加えて人参と玉ねぎのスライスが入った見た目にも鮮やかなサラダ。

だが、問題はそこではない。


「サラダの皿、大きくないか?」


「そんなことないよ。普通だよ」


事も無げに、妹は言う。だが、これは大きい。本日のメニューの中で、一番机の面積を占有している。どこから出してきたか分からない、横にも縦にも大きな丼にこんもり盛られている。


「まあ、いいじゃない。野菜は大事だよ。野菜は肉の2倍は食べろ、って良く言うじゃない。そもそも、日本人は農耕民族なのだから、野菜のほうが体に合っているのだよ」


そう言って、ずずいと妹は野菜の丼を私の方へと近づけた。

そして、思い出したように、人差指をピンと立てた。


「兄さんって、腸内フローラって知ってる?」


「名前は良く聞くけど、腸の中にいる何か、ということくらいしか知らないな」


可愛い名前だとは思っているけど、腸内にいるくらいだから、可愛い見た目をしている訳ではないのだろう。


「腸内フローラは、簡単にいると腸の中に住んでいる細菌だね。顕微鏡とかでみると、その細菌が集まってる様子が、お花畑みたいだから、そう呼ばれるんだってさ」


本当に可愛らしい理由だった。


「それでね、腸内フローラにはお腹の調子を整えたりする働きがあるんだよ。まあそれは善玉菌の方の働きなんだけどね。とりあえずここでは細かい話は置いておこう。今日のメインは『サラダ』だからね」


説明を聞きながら、私はこんもり盛られた野菜を消費していく。


「腸内フローラにとってのご飯って、食物繊維なんだよ。だから野菜をとらないと腸内フローラがどんどん枯れ果ていくのだよ。そして、腸そのものにもダメージを与えていく」


なるほど、と思いながら、私は腸内フローラへの兵糧をかきこんでいく。隠れて入っていたクルトンとフライドオニオンがアクセントになって、意外にばくばくと食べれるサラダであった。


「あと、野菜ってジュースで取ればいいと思う人多いけど、あんまり効果ないらしいのですよ。まあ作り方にもよるのだろうけど、大体のものが濃縮還元で作っているから、熱に弱いビタミンがばったばったと死んでしまうのです」


と、悲しそうに妹は言った。

ビタミンたちの冥福を祈るように両手を重ねる。


「だから兄さんはーー」


と、妹は続ける。


「倒れたビタミン達のためにも、頑張って生きなきゃ」


と励まされる私であった。


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