第2話side s
私は死んだ。
今からだいたい二年前。高校の卒業式、
久しぶりに、兄さんと晩御飯を食べに行ったあの日。
私は車に轢かれて死んだのだ。
死んだ実感というのはなかった。
――痛い、と思ったら既に死んでいた。
『私の体』を『私』は見ていた。
死んだんだなと実感した。
そして、意識がだんだんと薄れ、『私』という個人が薄まっていくのを感じた。
気づいたら、知らない天井の下に、私はいた。
乱雑な部屋。男物の服が散乱している。キッチンにも洗い物がたまっていた。きっとこの部屋の主はいい加減な性格なのだろう。
記憶が混濁している。車に轢かれたところまでは覚えている。とても、痛かったことも覚えている。そこから先は覚えていない。
部屋の中を歩き回ってみる。
電源がつけっぱなしのパソコンがあった。悪いと思いつつ、デスクトップのフォルダを漁る。
『妹』というフォルダを見つけた。この人には妹がいるのか、はたまた『妹』好きな変態さんか。
中身を確認すると、そこには『私』がいた。正確には『私』が写った写真。それが数多く保存されていた。
まさか、と思った。
がちゃり、と玄関から音がした。
ぼさぼさの髪に、やけに高い鼻。その顔に、私は見覚えがある。当然である。
「お帰りなさい。今日は早かったね」
私は、この部屋の主を出迎えた。
――ここは、私の兄の部屋だった。
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