第10話 友達の作り方

雲ひとつない青空。

輝く太陽。

それを眺める私。


「ーー暇だな」


ぼんやりと、窓から空を眺めて呟く。

暇、ということは、特にやることがないということだ。

つまり、平和ということだ。


「暇なら出掛けてくれば? この下り、先週もしたかもしれないけれど」


「特に行きたいところもないからな。先週も言ったかもしれないけれど」


「じゃあ、友達に連絡でもしたら。兄さんでも、友達の一人や二人、いるでしょう」


妹の言葉に、私は沈黙した。

学生時代は、一人か二人は確かに友達はいた。

しかし、大学を卒業し、地元を離れて就職してからは、職場のつながり以外は希薄になっていた。思えば、私の携帯は仕事以外の目的で使われたことがなかった。


「なるほどね。まあ、兄さん友達作るの苦手そうだもんね」


妹は私のとなりにポスんと座った。


「そんな兄さんのために、友達の作り方を教えてあげるできた妹ーーそれが私だよ」


にぱー、と笑顔を作る妹。


「ボールに名前つけるとか、そんなんじゃないだろうな」


「友達の作り方なんて簡単だよ。兄さんの方から話しかければいいんだよ」

与えられた回答は、単純明解だった。


ーー


妹はいつものように人差し指をピンと立てる。

「兄さん、友達から連絡が来ないとか言うけど、それは兄さんが連絡しないからだよ」


「だって、特に理由もないのに連絡するのって迷惑じゃないか」


「特に理由もないのに連絡を取り合う。それが、友達ってもんでしょ!」


親指をぐっと立てる妹。


「逆に言えば兄さんの元、友達だって同じ状況だよ。兄さんから連絡が来ないと、待っているのかもしれない。まだかなー、いつくるかなーって」


妹は続ける。


「兄さん、友達関係にメリットデメリットを考えちゃ駄目だよ。まあ、目的を持って友達を作るなら、友達が多い友達、を数人作って関係を維持するのがコスパ的にいいかな」


俗に言う、スーパーコネクターってやつだね、と妹は言う。


「その友達が多い友達が、兄さんが求めるスペックを持った友達に繋げてくれるからね。まあ、これだと友達というより情報屋って感じだけどね」


けどさ、と。

ぴとりと、妹は私にもたれかかる。


「友達がいると、人生の満足度も増えるらしいよ。孤独を感じなくなるからね。孤独は、人間にとっての毒だからね。孤独ーー正しくは孤独感、かな」


でも、と妹は私を見つめた。


「今の兄さんには私がいるから必要ないかもだけど」


だけれどもっ、と妹は私のポケットから携帯を強奪する。


「友達の一人や二人、復活させてもいいでしょう。孤独感を消す戦力は、私以外にもあったほうが安心だからねーーはい、通話ボタンをポチッとね」


そう言うと、持っていた携帯を私に手渡す。


「こういうのは、うだうだ迷っていても仕方がないのだよ。お、繋がったみたい。ザオラル成功♪」


「おー、巧じゃんか。久しぶり。お前から電話って何年ぶりかな」

電話口から聞こえる、懐かしい声。

何年振りだろうか。


ーー


そうして、久しぶりに旧友との時間を過ごした。

時間が経っても

場所が遠くても

友情というのは、それなりに長続きするものだと思った。

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