11-世界大戦
「勇者と魔王が現れると二つの世界のマナは丁度同じくらいの量となる。そして必ずマナの奪い合いすなわち戦争が始まるのだ。」
この話には賛同できないと思って絵里は思わず、
「何でそんなことを、二つの世界のマナが同じならそのままにしておけばいいじゃないですか」
女王は渋い顔をして話を続ける
「それが無理なのだ過去戦争を避けようとしたのだが、必ず戦争が起きるきっかけがどんなに警戒しても出来てしまうのだ。そして一度戦いが始まったら最後、人間界は勇者を戦争の象徴とし魔界では魔王を戦争の象徴として世界大戦が始まる」
「これまで2回の世界大戦が行われたがそのたびに多くの死が訪れた。そしてマナの奪い合いが行われた。マナは人間にとっても魔族にとっても生きるために必要なもの。その上負けた方の陣営のマナは勝った方の陣営に流れていき、裕福な生活を送る。たくさんの血と犠牲をと馬なったうえで」
「あれでも学校で習った歴史の教科書では世界大戦は日本と他の国で戦ったことになっていますけど」
「それも魔法の秘匿の問題もあるけど問題なのは時間なんだ。勉強してない子は真実が解らない。いや歴史上で起こった事実は常に歪められるもの。例えばその最たるものがそなたの国の織田信長という昔の王が行った、長篠の戦いでの3弾撃ちの話よ。」
「当時の日本は刀と槍だけで戦っていた時代に、火縄銃は画期的なものだった。しかし、火縄式なので、使用するまでに手間がかかる。
最初に銃口から火薬と鉛玉を入れ、専用の道具で押し込み。そして火皿に黒色の火薬を盛り、火打石で火縄に点火し、火挟みにはさんでおき。
その状態で狙いを定めると、火挟みが落ちて火縄の火が火薬に移り、そうすると銃内の火薬に引火して爆発し、鉛玉が飛ぶというものだった。」
「この戦いで信長は3000丁の鉄砲を使用し、武田騎馬隊に壊滅的被害を与えた上で敗退させた。
この時使われたとされる3弾撃ちとは、兵士(足軽)を3グループに分け、それぞれに火縄銃を持たせてAグループが撃つと、次はBグループが前に出て撃つ。その間にAグループは火縄銃の装着をする。次にCグループが撃つと、Aグループは発射に備え、Bグループは火縄銃の装着をする――といった、波状攻撃だ。
この方法で絶え間なく銃撃を続け、武田騎馬隊を壊滅させたとされている。」
「火縄の火は吹き起こすだけで良いのだが、火薬や鉛玉の装着には慣れていても2~30秒はかかるとされています。この手間をかけている間に敵に襲撃されるので、信長は上記のような波状連射の作戦を考えた。」
「これは1990年代の教科書では当たり前とされていたが、2000年代の教科書では江戸時代の通俗小説の中での出来事とされていたので、誤りだったことが解った。」
「また同じように古い教科書では1192年に鎌倉幕府が作られたと長く語られた。が実際に作られたのは別の年だと同じように2000年代になって判明した」
「そして起こった問題の風化というものもある。どんなに悲惨な戦争が起きても
人は年月が経つほど忘れてしまう。」
「第二次世界大戦は今から約120年前の出来事だが、戦争を知らない世代に教科書に合った虚偽の事実でも2010年代の後半で日本とアメリカが戦争をしていたことを知らない世代が出てきた。」
「歴史というのは曖昧で解釈によって変化していく、一部の人間に都合のいいようにな」
絵里は寒気がした。本当におぞましい。自分の知らないうちに勝手に戦争が始まってみじかな人が知らず知らずのうちに死んでいき、さらにその戦いさえ簡単に塗り替えられる。
「じゃあどうすればいいんですか。どうやっても戦争は止められない。人間が生きるためマナが必要。何もしなければ多くの人達の命が失われる。なら犠牲を最小限に収めるなら私が勇者として戦って魔界のマナを強引に奪い取れっていうんですか」
女王様は納得してくれないかもしれないと思った。それでも絵里は自分の主張を続けた。
「そんなのは私の目指したい正義の味方じゃない。片方を救うことでもう一方が救えないなんて私はそんなの認めない。もし本当に私に勇者の力があるのなら人間も魔族も両方救いたいです。どっちかを切り捨ててどっちかを救うなんてできない。」
そんな彼女の答えに女王はにこりとした。
「どちらも救いたい・・・今までの勇者は迷いなく人間サイドとして戦ってきたが、今回の勇者は本当にイレギュラーだな。どちらも救いたいか、ふむふむ・・これならば・・計画の方も・・・奴の思惑を崩すことだって・・・」
何だか今まではきはきしてきた女王がぶつぶつ考え込んでいた。
約5分ほど考えて方針がまとまったようだ。
「ではまずはこれをそなたに授けよう。これがそなたが戦うためにそして道を切り開くために使うため
それは美しいペンダントだった。お洒落なものだがとても剣には見えないが。
「細かい使い方は、ペンダントに語りかければ自然と頭に入ってくる。肌身離さず持っておくことだ。これを使えばそなたは大きな力が手に入る」
「そなたの魔力をコントロールする機能もあるからな。わが国で作った最新技術よ」
「ありがとうございます。女王様それで私は今後どうしたらいいでしょうか」
絵里はこの戦争を止めるために動きだそうとしたが、具体的にどうすればいいか解らない。
「うむ、まずは我が国アヴァロンに来てもらおう。学校も転校することになるだろうし生活環境も変わるだろうが、我が国に来れば問題を突破する解決策も見つかるだろう」
「それにアヴァロンは表向きは学問の国となっているが・・・まあ学問も充実しているがアーさー王伝説に出てくる、アーサーが最後にたどり着く土地にあやかって名付けられた国で、いろいろな世界との出入り口の側面もあるせいか他の地域よりマナが濃く、魔法研究が世界で一番進んでいる国でもあるのでそなたに不利益になることはないだろう」
「解りました。私アヴァロンに行きます。あ・・でも」
絵里は児童養護施設で暮らしている。施設を少しでも助けようとアルバイトをしていたが外国の学校に編入して生活していくお金は当然足りない
「そなたの生活費、学費はこちらで工面しよう。そなたは成績も良く優秀だし、キャメロット学院に編入しても学業の面でもついていけるだろう」
どうやら絵里の心配事はすっかり準備済らしい。
「それでは改めて汝の剣をこのバカげた戦争を止めるために使うことを誓うか?」
「私の剣をこの戦争を止めるために誓います!」
そして私は正義の味方になるんだ。絶対に
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