13-特訓

 次の日の昼休み幸助は絵里を外に呼び出した。ボンズでアドレスを交換して連絡を取り合えるようになったため。二人は別々に教室を出て、体育館に入っていった。二人ともジャージ姿である。


 昨日の話し合いでまず絵里に戦いの基礎トレーニングを施すことにした。彼女は魔力についても魔法についても知識もなければ、実戦経験が昨日の出来事だったといういことでこのままではまずいだろうというのが桜田一家の見解だった。


 魔王とぶつかる事は今までの歴史上、勇者が避けられたことはない。その為彼女自身が強くなることが必須だった。


すーと息を吐き

「貴様は俺の訓練に生き残れたら―――

兵器となる。戦争に祈りを捧げる死の司祭だ 。


その日まではウジ虫だ!地球上で最下等の生命体だ。

貴は人間ではない。

両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!


貴様は厳しい俺を嫌う。だが憎めば、それだけ学ぶ。


俺は厳しいが公平だ、人種差別は許さん。

黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん。

すべて―――平等に価値が“ない”!


俺の使命は役立たずを刈り取ることだ。

愛する海兵隊の害虫を!分かったか、ウジ虫!」


ここまでいったところで絵里がポカーンとして見ていた。


「何かちがうなあ、人を鍛えることってなかったから昔の映画の言葉を引用したんだが、これじゃやる気が出るどころか、ぶっちゃけ萎えるな」


こうすけがあれから絵里を鍛えるために気合を入れさせようと訓練の始まりの言葉を考えてきたこうすけだったが、この映画でこのセリフを言ったキャラクターは途中で殺されている。


「これは・・逆効果だ」

「調べた段階で気づいて下さい。何の映画ですか。これ思いっきりひどい言葉が羅列されてるじゃないですか」


こうすけのメモを見ながら、二人してはあーとため息をつく

その時絵里はおかしなことに気づくこれだけ騒いでいるのに誰も体育館に入ってこない。どうしてかとこうすけに聞くと勘がいいなと褒められた。


「うん、俺たちがトレーニング出来るように結界を張っているんだよ。だから他の生徒は誰もここに入ってこれない。まだお前には見えないけど魔力のコントロールを覚えれば体育館が黒い壁でおおわれているように見えるから」


「結果ってあれですか漫画とかゲームとかで出てくるようなバリアーみたいなものですか。」


「例えはあれだがそんなようなもんだ。ちょっと違うのは障害となるものが入ることを許されない場所を作るためにあるんだ。界を結ぶことで、空間を内と外に分けて、内側は聖域、外側は俗域と考え、中の人間がルールに従って生活できるように、場所を限定したものだ。」


「したがって攻撃を防ぐ以前の問題として結界内に侵入できないよう

そもそも人を寄せ付けない効果がある。どの国の宗教でもそうだが魔法と宗教は密接な関係がある。その中で危険な修行をすることもあるだろう。周りを撒きこむような危険な修行だって当然ある。」


「そんな中に一般人を入れたら、事故じゃ済まされず、場合によっては死に繋がる。魔法とはそういうものだからね」


結界の話を聞いた瞬間、自分は本当に非日常の世界に足を踏み入れたのだと実感した。


「後で急に魔物に教われた場合の結界の張り方は教えるからね。とりあえずはなるべく一緒に俺たちの誰かがお前がある程度ものになるまでは安心していいよ」


「解りました。」


「よし、いい返事だ。ではまずは基礎中の基礎。魔力を高めるトレーニングと魔力を抑えるトレーニングを始めようか」

少し不安を感じた。自分が持っている魔。つまり彼女の魔力が人並み外れてるせいでいろいろな人に迷惑をかけてきたのだ。その魔力を動かすということに不安を感じないわけはない。


「大丈夫少なくとも神崎の魔力で俺が傷つくことはない。例えお前の魔力が暴走しても止められる準備はあるから心配するな」

体育館には何に使うのか解らないような瓶から明らかに人一人では持ってこられないようなものまででかい十字架の拘束道具まであり、何故かチェーンソーまである。

自分の魔力の暴走以前にこの意味不明な大量の道具の方が気になった。しかもチェーンソーを彼は話をしながら念入りに磨いていた。別の意味で怖い


「さて神崎、魔力って何だと思う?」

いきなりの質問に絵里は言葉を失う。自分の魔から眼をそらしてきたんだから当然だ。それでも一応恐る恐る答えてみる


「魔法を使うためのエネルギー源みたいなものでしょうか?」

「うん、テストなら模範解答だろうね。では第二問それはどこから出てくるものかな?」


「体力みたいに普通に生きていれば普通に存在するものじゃないんですか?」


「うん半分正解、半分はずれ魔力は耐えず人間が産みだしているものなんだ。まず魔力の話をするためには魂の話をしないといけない。」

「魂の話は宗教とかであったりなかったりいろいろな解釈をされるけど、魂というのは実在するというお話を信じてもらわないといけない。」


絵里は魂を信じていたので魂はあるものだと思っていた。何度も死ぬような目にあって自分が行き残れたのは母や父、今までお世話になった人が天国から見持っていてくれて助かったからだと感じている。だから魂の存在を信じていた。

自分の話を疑わずについてきてくれると感じたこうすけは話を続ける


「人間の体は生物体の構造上・機能上の基本単位である細胞でできている。これと同じように魂は気から出来ている。気は生命活動の原動力となるものであり、魂から気が体中に流れ魔力を発生させている。」

「魔力の高い人間の特徴は魂を構成する気が大きくてしっかりしており、それでいて高密度でできているので気が体を流れた瞬間、膨大な魔力を精製し続ける。そして東洋の思想ではあるんだけど人間には血と水と気が耐えず流れている。この時、気の通り道がしっかりしていればいるほど瞬間的に魔力を放出し続ける」


つまり彼女は自分の体のことを疎ましく思って居たが実際には普通の人間より丈夫でしっかりとしたエネルギーを常に持って生きてこれたようだ。


「でも、それじゃあ魔力をコントロールするのは無理なんじゃないですか。生きてる限り魔力は精製し続けるんだから」


そんな彼女を読み切ったように

「大丈夫魔力はコントロール出来る。その方法が呼吸法だ」


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