第2章ー1話ケイオス・アドルフォス殺人事件
5月21日、海岸沿いの都市キュドニアのアドルフォス邸にてアヴァロンでも有数の魔導士ケイオス・アドルフォスの死体が発見された。通報者はマリナ・アドルフォ、彼の夫だ。大事な客が来るので今夜は子供を連れて実家に帰ってほしいと3日前に頼まれ、話が終わったら連絡してくる予定だったものの
3日たっても連絡が無かったら帰って来た。帰って来た時には家には鍵がかかっていた。鍵を開けて
「あなた、」と大きな声で叫んでも返事がなかった。
研究室にも姿なく、自室にいるのかと思って彼の部屋のドアを叩いても呼びかけても返事がない。部屋には鍵がかかっていた。研究室ならともかく自室に鍵を掛ける習慣がケイオスには無かった。
明らかに様子が変だと思ったマリナが彼の部屋のドアを壊して中に入るとケイオス・アドルフォスの死体が横たわっていた。
「きゃー」
彼女は思わず叫びスマートフォンを震える手で操作して、警察を呼んだ。
魔導士の殺人事件だったため、魔法犯罪対策庁の刑事が現場にやってきた。
普通の魔導士なら地方の魔法犯罪対策課が担当するのだが、今回は超大物の魔導士が殺害されたため国が動く事件であったのがそうの理由である。
黒人のダニエル・ボマー警部とロック・ストライフ警部補がご苦労様ですといった。言葉を受けて、中を調べる。
「しかし、何も出てきませんね。」とロックは訝しんだ。
3日前に来客の予定があってそれも重大な案件で、奥さんと子供に家に帰ってもらうようにしたのはよほど重要な話だったのだろうと。
「うーむ」
妙なのはその形跡が全く出てこないことである。普通人とアポを取るときはカレンダーやら手帳に書いておくものだが、その形跡がなくパソコンにもスマートフォンにも同様だった。
被害者は鋭いとがった刃物のようなもので突き刺されている。心臓に穴が開いているため間違えはないだろう。
窓のサンにはほこりが溜まっていて窓を開けて外に逃げたわけでは無い。同様に外から入ったわけでもないようだ。つまりケイオスは密室で殺された。
しかも奇妙なのはそれ以外の部分が綺麗すぎる。その部屋にだけほこりやチリがあるのに他の部屋は不自然なほど綺麗な状態で保存されていたのである。
まるで密室以外は毎日掃除に来ているみたいだ。だが近所の人の話を聞いてみるとこの家に出は入りした人間は見かけないらしい。
5日操作しても操作は進展せず、上から、どやされる。ダニエルは苦渋の決断のすえあいつを頼むかと決心した。
「もしもし・・ええそうです。彼の協力を求めたいのですが」
電話の相手は何を要求したいのかすぐに察したらしい。
「ええ・・ではお願いします」
ふーとタバコを吐いてダニエルは額に手を当てて苦い顔をした。
「せんぱーい。そんなにあいつに頼むの嫌ですか?」
「嫌というより、やつには普通の高校生活を送らせたいんだが」
ダニエルはプライドより奴と呼ばれた学生の将来を案じた。だから出来るだけ彼の自由を尊重したかったが。
「ロックは先輩はやっさしいですねーW機関の連中何て他の連中みんな使い捨てみたいな扱いしているのに」というと
「それでも子供を犠牲にするのは納得いかんのだと」
ダニエルには二人の子供がいる。もしこういった仕事につきたいといったら死ぬ気で止めるだろう。
やつは仕事を喜んで引き受けるだろうがダニエルはそこに罪悪感を感じていた。
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