10-少女と女王
半年間は何事もなく絵里は学校生活を送れた。しかし秋になってから彼女に異変が起こった。きっかけは手の甲に十字架のあざがでたことである。時々痛みを感じるし夢を見る。それは大勢の人間が見てる中で貼りつけにされる夢だ。
その夢の中では何を言っても誰も助けてくれない。そのあざが彼女の手の甲に出たことでまた彼女は自分の魔を制御できなくなった。そしてとうとう本物の魔を呼ぶことになる。
ある日の夜彼女は貼り付けにされる悪夢を見て夜中に起きた。寝付けなかったので、就寝時間は過ぎたが、外に出た。ふらふらしながら歩いている中不気味な唸り声が聞こえてくる。やばいと思った瞬間彼女は走りだした。
だがそれ以上の速さで後ろから何かがやって来る。あっという間に追いつかれた。
ワ―ウルフと呼ばれる2足歩行の狼だ。絵里を噛み千切ろうとしていた。
殺される。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
私はいろいろな人に守られた。だから私は正義の味方にならなくちゃいけないんだ。周りのみんなを守るんだ。だからこんなところで死んでたまるか。
逃げるのをやめて魔物を睨み付けた。力の差は明らかだ。それでもあなたには負けないという強い意志が彼女の眼に宿っていた。
「ふむ威勢がいいのはいいが勇気と無謀は別物だよお嬢さん」
ワ―ウルフの後ろからコツコツと靴の音が聞こえる。街灯に照らされた姿は絵里がこれまで出会ったことが無い種類の人だった。
綺麗に整った赤い髪に蒼い眼。それにドレス姿。年齢は40代といったところか、手に煙管を持って時折口に持っていってふーと息を吐いた。あまりの光景にこれは夢なんじゃないかと絵里は思った。
ワ―ウルフが赤毛の女性に目標を変えて襲い掛かった。こいつを始末しなければ自分が殺されると本能で感じた。
彼女はそんな殺気を軽く受け流し、「風よ」と呟いた瞬間ワ―ウルフの体が引き裂かれた。そして「光よ」と煙管を降るとワ―ウルフは光の粒になって消えていった。
「ふー良かった。危うくわらわが会いに来る前に永遠にそなたに会えなくなるところだったぞ」
「あの・・助けていただいてありがとうございます。それであなたは何もの南ですか?あんな化け物を一瞬で」殺すだなんてという言葉は口に出しずらかった。
「ふむ、自己紹介が遅れたな。わらわはアヴァロンの女王ナディアである。神崎絵里そなたに会いに来たのだ」
「ええ」アヴァロンの名前は知っている。世界有数の学問の国で多くの研究者が学んでいるいわば学問国家だ。そんな国の頂点に立つ人が何故私に?という疑問が起きた
というより疑問だらけだ。
「まあ、信じられないのも無理はないか。今回は特殊なケースだしな。この国から出るのは初めてだし、この国は魔法とあまり縁がないから、なあふむどこから説明したらいいか」
女王はふーむと悩んでいる。その姿を見てようやく安心する。女王様も人間なのねと
「あの魔法の事は聞いたことがあります。両親が私の体質に対して教会に相談に行ったとき少しだけ話してくれましたから。女王様のこと信じます」
「あーまあそなたの体質ならば教えてしまっても無理はないか。本来は一般人に魔の世界を話すのはご法度なのだがそなたの場合引き寄せてしまうからな」
「よろしい。そなたは強い魔力を持っていてるため良く無いことや魔そのものつまり魔物が襲ってきたりするわけだが、最近手に
うわー何か頭が悪い喋り方だなーと若干失礼なことを思いつつ、この手のあざを
「それでこの
「
勇者と言われてもまるでぴんとこない。絵里がたまにやるようなゲームや漫画に出てくるような存在か。それとも何かの比喩か。例えば国のために勇気のある行動をした人のことをいうのか判断がつかなかったが
「ふむ、前者の意味でも後者の意味でもどちらでも間違ってはいないぞと」まるで彼女の思考を読み切ったようにいった。
「勇者の
「魔王ってあのゲームとかに出てくる人間の世界をするぞーとかいあの魔王ですか?それに戦争って」
いきなり勇者とか魔王とか理解しがたい問題だった。魔法の事は幼いころ聞いていたし、さっき目の前の彼女が使ったのが魔法で間違えないだろう。ただいきなり戦争とか言われてもぴんとこなかった。
「うーんおしいが魔王は人間の世界を支配しようとする存在でない。ある意味において魔王を悪とは断定できないのだ。魔王は魔界と呼ばれる世界に住んでいてな人間とはエネルギーの供給方法が違うんだよ。人間の世界、すなわち人間界にも魔界にも大気にマナと呼ばれる魔力が存在する。魔界の生物はマナを直接吸収しているため人間よりエネルギー供給しやすく人間より大量の魔力を持っている。逆に言えば魔界のマナが枯渇すれば魔族は一気に弱体化する」
「一方で人間界でもマナは貴重な資源だ。50年以上前から石油資源は徐々に枯渇していき火力発電など人類を稼働させる資源が問題になった。他に水力、風力、太陽光発電ではパワー不足、原子力発電は構造に問題があった。人類が発展していく中で資源の枯渇は避けられないとこれまでの歴史の中のかなり早い段階で我が国は気づいた。そこで考え出されたのがマナの利用だった。」
「表向きには公表されてないがマナは道路・鉄道・上下水道・送電網・港湾・ダム・通信施設様々なインフラに使われてきた。その為人間界にとってもマナが枯渇すれば様々な国々の生活に大きく影響を及ぼす。」
「しかしある時期にマナが大きく変動する時期がある。それが今なのだ。」
話が大きくなりついていけなくなりそうだったが何とか話を続ける。
「どうして今なのですか?」
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