9ー彼女の過去

「いやー熱い名言だったねー俺感動しちゃったよ。臭くて、後でこう兄をしってる友達にこの話していい?」

「本当だねー何か僕も息子の成長ぶりに感動して涙が出そうになったよ。あ、幸助君の言葉、後で職場で使ってもいい」

「うちで一番ドライっぽくて一番熱いわよね幸助って」


絵里が泣くのを辞めた後、思いっきり家族にこうすけはからかわれていた。

「何故、俺はあんなことを、あんなテンションで?」


自分のキャラが崩れて、頭を抱えて座りこんでいた。次々にからかわれかなり落ち込んでいる。


「涙をぬぐって、幸助さんありがとうございます。幸助さんってぶっきらぼうだけど本当はすごく優しいですね」

絵里の本当に素直な言葉に「ぐは」っとうめき声を上げて倒れた。


こうすけのダメージが回復したところで

「さあ、話を続けよう。」とクールキャラを貫こうとしたこうすけを他の4人はくすくす笑いながら見ていた。


「さて神崎去年女王様にあったときのことを聴かせてくれるか。お前が勇者がやることについて。どこまで知ってるか解らないとこちらも次の段階の話が出来ない」


「解りました。みなさんに全てお話します。私がこの国に来た敬意を」


 2059年9月、桜田絵里は施設から学校に通っていた。彼女は小さいころ両親を亡くし、児童養護施設に預けられた。彼女には叔父や叔母がいたが親戚全てに引き取ることを拒まれた。彼女は穏やかで優しく、人の言うことを素直に聞くいい子だった。


 しかし彼女の周りには不思議なことが起こり続けた。産まれた時の病院が火災事故にあったり、彼女を連れて遊びに行った遊園地で事故が起こったり、入院中ではあったが元気だった祖母が入院中休死したり、彼女の周りでは不幸が起き続けた。


 彼女が通っていた幼稚園でも彼女にいたずらしたり喧嘩をしたり、そんな子供のよくあることでも彼女に危害を加えようとすると、かならず見えないナニカから報復を受けた。


 それでも彼女の両親は彼女に優しかった。

「大丈夫、絵里のせいじゃない。絵里は悪く無い」といって庇ってくれた。


 そんな両親も彼女の前からいなくなった。大きな事故で彼女を残して両親は先に云ってしまった。それは何でもないどこにでもある交通事故だった。普通なら彼女もろとも亡くなってしまうはずの自動車事故だったが奇跡的に彼女だけが助かった。


 両親は亡くなる前に教会に相談していた。こういったあまりに不自然な現象は教会に相談するのが当たり前だった。


「この娘を助けてください。きっとこの娘は何かに取り憑かれたりしているんです」

しかし彼女が住んでいた町の教会のシスターはこう言った。


「この娘は何にも取疲れたりしていません。ましてや魔法や呪術を使われたわけでもありません。


魔法や呪術の存在は秘匿されていて国際法で一般人に話すのは原則禁止だったが、

シスターはあえて話した。もっと残酷なことを話さないといけなかったからだ。


「彼女は並外れた魔力をもっている。それが良くないものを引き寄せるのです。よくないものが良くないものを引き寄せる。彼女の魔が彼女の不幸を引き寄せるのです。しかし、彼女自体は強い魔を持っているため、周りに危害が及ぶのです。」


「じゃあ治す方法は?」

「成長すれば自分の魔をコントロール出来るようになるでしょう。しかしには治らない。この娘は一生自分の魔と向き合わなければならないでしょう」


その残酷な答えを聞いたときのことを絵里はよ覚えていた。子供の時に聞いた話なんて忘れてしまう。それも彼女が幼稚園時代の話ならなおさらだ。それでも彼女は覚えていた。

 

だって

「なら私が守りますよ。娘は私が守りますよ。魔法とか魔力とか私に信じがたいことだらけだけ守りますよ。だってこのは私の娘だ。何にも代えられない私の娘だ。妻が妊娠したとき幸せだった。この娘が生まれた時、幸せだった。この娘が立ったとき歩いた時、幸せだった。この娘が笑ったとき幸せだった」


「この娘が私のお腹に宿ったとき初めて、幸せを感じた。とても元気でお腹を蹴ったり、女の子だって決まったときは可愛い名前を付けてあげないとなって思った。この娘生まれた時は主人がこの娘はいずれお嫁に行っちまうんだろうなっていって気が早いわよって笑い合えた。だから私も守ります。」


二人の決心を彼女は覚えていた。だから思った。

「私が守らなきゃ。強くならなきゃ。早く大きくなってパパとママを守るんだって」


そんな両親もいなくなった。彼女には不幸がつきまとった。それでも周りの人は言ってくれた。


「絵里ちゃんは悪く無いよ」って

そのうち彼女を預かれる親戚はみんないなくなって彼女の魔に対抗できる施設に入った。聖王と呼ばれた人が建てた教会が建てた施設でここに入ってか高校に上がるまでここで暮らしながら、勉強していた。この施設は結界に覆われて魔のものは入ってこれず、魔を持っていてもその魔に影響をうけることなく生活出来た。


絵里が自分の魔が及ぼす影響を抑えられるよう施設で訓練し、普通の学校に通えるようになったのは中学校3年の時だった。


普通の学校に通いたい。

そんな彼女のごく普通の当たり前の夢は叶い。高校受験を突破し普通高校に入学した。

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