フクジュソウのせい

 ~ 一月一日(月祝)  特別編 ~


   フクジュソウの花言葉 おめでた




 てん  てけてけてけてん


 てん  てけてけてけてん




 いつもご覧になって下さる皆さま。新年、あけましておめでとうなの。


 旧年中は大変お世話になりました。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


 ……なんで?


 元旦からトップギアですね君は。なんでってなにさ。


 なんで道久君、振袖?


 そっちか。そこで腹を抱えて笑ってる、君んとこのお調子もんに聞いて下さい。


 ていうか、道久君のママ、なんでジャージなの?


 あれは日本酒の時のユニフォームだそうですから。合ってます。


 お正月なのに?


 普通はどこでもそういうもんでしょうが。


 つ。


 …………ん?


 しょうが、つ。


 …………俺は今日一日、口癖を一つ封印します。


 いやなの。困るの。今日を逃したら、三百六十日ちょい待たないといけないの。


 君が困るのはともかく、お客様が困っていらっしゃるから。早くご案内しなさい。


 そうだったの。ささ、こちらの上座にどうぞなの。


 飲み物、何がよろしいですか? ……いや、そんなマニアックな物無いです。


 はい、シャンメリーなの。


 君も。余りもんを持ってきなさんな。炭酸苦手な方、いらっしゃるんだから。


 はい、おせちをどうぞなの。


 こら。このシチュー尽くしは出すなと言ったでしょうが。


 つ。


 くっ……。ほら、ちゃんとしたのお出しして。


 ちゃんとしてるの。特に、右下のチャーシュー麺味のシチューは傑作なの。


 怪奇現象でしかありませんから。……え? こちらを食べたい?


 ほら。大好評なの。


 …………念のため、胃薬も置いておきますので。


 ねえ、なんで?


 ええい、袖を引くな。俺だって振袖とかわけ分からんですって。


 道久君の頭、どうやったら福寿草が固定できるの?


 知りません。それより飲み物お注ぎして。


 はいなの。おっとっとなの。


 こぼしとる! ああもう、なにやってるのさ!


 だって、日本酒は溢れさせて器にこぼしてなんぼだって。おばさんが。


 それは枡酒! これはお膳でしょうが!


 つ。


 ……腹立ちますね、それ。ほら、お膳を取り換えて下さい。


 別にいいよって言ってくださるけど?


 秋立のお客様はお優しい方ばかりだからって甘えなさんな。


 ほんとそうなの。ありがたいの。


 まあ、内容が内容ですしね。今後は優しい真面目なお話で行くから。


 あ、そうそう、忘れてたの。


 ん? ……ああ、そうでした。秋立の告知ね。


 お客様に新年のご挨拶しなきゃなの。


 …………は? なに言い出しましたか。ご挨拶、したよね?


 まだなの。お客様、明けましておとしだまなの。


 最悪! あ、出さないでくださいお願いですから。そうして皆さんが甘やかすと俺が大変なので。


 ここだけの話、この金額次第で扱いが変わってくるの。


 変わらないよ!? ほんと最悪だな! 


 一位の方は、ゲストに登場できるという特権が……。


 無いよ! 適当なこと言ってないで。告知しなきゃ終わらないでしょうが。


 つ。


 …………秋立七冊目は! コンテスト応募都合で、ちょっと趣向が変わります!


 そうだったの。道久君、そんな重要な事は最初に言わないとなの。


 ちきしょう! タイトルも、七冊目だけ変わりますのでご注意を! その都合で、俺は立たされません!


 …………うそなの。


 嘘じゃない! 今後ともインフォメーションは随時させていただきますので、皆様どうぞこれからも仲良くしてやって下さいませ! 以上、新年のご挨拶とお知らせでした!


 絶対うそなの。立たされるに決まってるの。


 では、お時間頂戴できる限り、ゆっくりとして行ってください!


 あたしがお酌するの。はい、おっとっとなの。


 こぼしとる! ああもう! さっき言ったでしょうが!


 つ。





 本年も、変わらぬご愛顧を、どうぞよろしくお願いいたします。


 皆様にとって、沢山の思い出が出来る素晴らしい一年となりますように。



 2018年 元日  如月仁成




 …………しょうが。


「つ、なの」




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