第16話
「うわー、赤点取っちゃったんだ・・・。え、最近取らないように頑張ってたよね。何かあった?」
クラス担任経由でまわってきた「補講者対象リスト」をタローに見せると「ご愁傷様」とでも言いたげな、非常に気の毒そうな顔をされ俺は益々不安が募った。
何かあったも何も、元いた世界ではグラマーに抜き打ち小テストなんてなかったんだって。
「・・・補講って、どんなのだっけ」
「どうって、リョータ自分でマジで最悪だった、もう二度と赤点なんて取らないって言ってたじゃん!」
恐る恐るタローに聞けば、何言ってんの?と驚愕の顔つきで聞き返された。それでもめげる事なくしつこく聞けば「マジで頭どうかした?」と心配されながらもかいまんで説明してくれる。タロー、本当にいいやつだな。好きになってもいいかもしれない、は早すぎか。
タロー曰く、彼は1回目の小テストの時に赤点を取った。そもそも初回の小テストの時は全員補講がそんなにキツイものとは微塵にも思っていなかったから、俺も含めクラスのほとんど、特に男子(女子は何故か英語が強い)が赤点を取った。そうして補講を受けたわけだが、それがとんでもなくキツかった。日程は金曜日の全授業終了後、部活をしている奴も強制で休まされ補講に参加する。補講内容は「わかるまでやる、のスパルタ式」。一度目は皆が赤点を取った小テストの英文法解説を講義式で聞いて、その直後に小テストを受けその場で先生が採点、満点を取ったら理解できたとみなされ退場できる。一問でも間違えればアウト。残って次の講義__再びさらに詳しく講義があり、その後小テストを受け、満点を取れば退場、を繰り返す。
小テストは一体何パターン作っているのか、ご丁寧に毎回違う物を出してくるから暗記は一切効かないので講義を必死で聞かないといけないし、どんどん仲間がテストをパスして「卒業」していき教室内の人数が減っていくのはむちゃくちゃプレッシャーがかかる。また人数が減るとほぼ先生と生徒のマンツーマン形式となり、講義中に例文を解かされたりとただ聴くだけ、ノートを取るだけではいかなくなってきて後に残れば残るほどきつくなってくる。最初は講義を受けるだけだと思ってのほほんとしていた生徒が最終的に全員必死に講義を受けるようになっていた。ちなみに補講を欠席したらグラマーの赤点は確実らしい。その結果、皆補講は一度目でこりてグラマーの勉強は真面目にするようになり、抜き打ちテストで赤点を取る生徒は回を重ねるごとに減っていったらしい。しかしグラマーが元来めっぽう苦手な俺は嫌だ嫌だと言いつつ中々点数が取れず、補講の常連だったそうだ。
「リョータ、本っ当に補講嫌がっててここ最近は頑張ってテスト赤点ギリギリ免れてたじゃん。だから今回も大丈夫だと思ったんだけど・・・。復習する暇なかった?」
小首を傾げ、本気で心配している様子のタローに、俺はただ苦笑いを返すほかなかった。
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