第1話
異変を感じたのは先週の土曜日の事だ。
前日にセットしていたはずの目覚まし時計が鳴らず、起きたらコンビニバイトの開始時間から1時間も遅れてしまっていた。ちなみに部活は帰宅部だから何もしていない。店長から連絡が入らなかった事を不思議に思いながらも焦ってバイト先に電話をしたら、何度かけても「おかけになった電話番号は現在使われておりません」とつながらない。
とりあえず慌てて着替え、部屋を出ればいつも起きているはずの両親がリヴィングルームにはいなくて、テーブルの上に見知らぬノートパソコンが開いて置かれていた。パソコンは無視して書き置きがないかメモ用紙を探すが何もない。両親の携帯に電話をしてもやはり「おかけになった・・」のアナウンスでつながらない。
たまにではあるが、町内の人が突然亡くなった時にお通夜とかで両親が慌てて出かける事もあったので、今回もそれだろうと自分を納得させ、とりあえずバイト先へと出発した。
ところが、だ。自転車で5分の所にあるはずのコンビニがなかったのだ。一度気付かず通り過ぎ、慌てて引き返して何度見ても店はない。あっただろう場所は知らないコインパーキングになっている。
そんな馬鹿な。ここは登下校の通り道だ。確かに昨日まではあった。潰れるなんて話は店長から聞いていない。そもそも、昨日の夕方にはそこにあったのに、それからわずか半日でコンビニを潰して駐車場を整備するなんて事ができるもんか。
あいかわらず店長に電話はつながらない。俺はコンビニがあった筈の周囲をしばらくうろうろした後、途方に暮れながら自宅に帰るほかなかった。
まだ両親が戻っていない静かな家へ帰ると、ふとテーブルの上にあったパソコン画面に目が行った。画面にはたった一行文章が刻まれている。思わず目が吸い寄せられた。文章にはこうあったのだ。
「亮太くん、今度は幸せになってください」
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