第32話
頭の中がぐるぐると混乱する中、いつの間にか2時間目の古文の授業が始まっていた。
いや、ちょっと待て。落ち着いて現状を整理するんだ。
亮太は古文用ノートの下に少し重ねる様にして、常に持ち歩いている小さなメモ帳を広げた。
寝ておらず真面目に黒板かノートに向かっていれば怒られる事もなく、先生がほとんど喋って進む形式の古文の授業は他の事を考えるのにうってつけだ。
広げたメモ帳には4人の人物の名前が書いてあり、亮太は手に持ったシャープペンシルを所在なげにくるくる回しながらそれをじっと見つめた。
ちょっと待て。もう一度このゲームの基本に戻って考えてみろ。
クラスメイトの鈴木太郎、グラマーの先生篠崎達也、幼馴染の佐藤 巧、それから最近出会った新堂 優。
俺はこの中から俺を本当に好きな人を見つけなければならない。
今の現状として、
と亮太は新堂の名前の横に矢印(→)と「告白された」と書き、篠崎の名前の横に矢印(→)と「新堂と恋人同士(嘘)だと思っている」と書き足した。
本来なら一人ずつ付き合っていって〇か×かを見極めるのがいいのだろうが、自分は早く元の世界に戻りたいのにそんな暢気なペースで行っていいのだろうか。いや、良くはないだろう。進行が絶対遅くなるに決まっている。見極めるのに時間がかかるからたとえば一人三か月付き合うとしたら四人で一年かかってしまう。冗談じゃない。ギャルゲーなどした事がないからさっぱり分からないが、こういう恋愛ゲームって皆どうやって進めていくものなんだろうか。とりあえず新堂さんの事はどうしたらいいんだ、ずっと返事を引き延ばすわけにもいかないし。それに篠崎先生の事も。
真実は伏せるとしてこんな時誰かに相談できたらいいのだが、この世界で相談できそうな相手は・・・。
とそこまで考えて亮太は前に座っているタローを見た。彼は頬杖をつき教科書を見るふりをしてぴくりとも動かない。完全に寝ているのだろう。
タローは・・・、勘だが恐らく根は真面目な奴でこう言った話を言いふらしたり茶化したりはしないタイプだろう。この世界で俺と彼は仲の良い友人らしいし。
だが、
彼も一応攻略対象の一人だから、俺が告白されたなんて言えばぴーぴーぎゃーぎゃー騒ぎそうな気がすごくする。
となると、と亮太は斜め後ろをちらりと見た。
少し離れた遠い席でも180センチある長身の彼はよく目立った。こちらは相変わらず何を考えているのか分からない無表情でぼーっと前を見ている。タローを通じてなんだかんだ交流する事の多い黒田秀平だ。恋愛がらみの話には非常に疎そうなのが少し心配ではあるが彼は攻略対象ではないし、相談してもいいかもしれない。仮になんのアドバイスももらえなくても、彼も口が堅そうだから大丈夫だろう。
亮太は相談者候補からタローを打ち消し、とりあえず秀平に話してみる事にした。
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