第21話

この章の終わりに、心霊体験が必ずしも脳内現象だとは言い切れないと思い知った

自身の体験をご報告したいと思う。例え、どんなにリアルな実体験をしたとしても

また複数の者が、同時にそういった経験を共有したケースであっても、脳には、何らかの連携し合う機能が潜在している可能性もあるのではないか?

それならば、決定的な物理現象等の他には、これらの実在を証明する手立てはない

だろう。

以下は、私がその回答を得る事ができた実体験である。

中国地方のとある観光都市。テレビドラマで一躍有名となったが、それ以前に訪れた折の事である。

目に見えぬ程の小ぬか雨が音も無くそぼ降る日であった。しかも風もほとんど無く

人通りも絶えていた。

そんな中、自分はとある小さな寺院とそれに併設された墓地の前に佇んでいた。

奥の方に少し目立つ背の高い墓石が見えた。先が角錐形に尖っている事から、軍人

さんの物であろうと察しが付く。何故か立ち止まってボヤッと眺めていた。伯母が

雨の日に墓場に行くもんじゃないよ、と常日頃言っていたのを思い出しつつも、そうしていた。すると、目の前3メートル程の所にある生垣で、綺麗に四角く刈り整えられている部分から、樹皮が無くて、ちょうど百日紅の様な木の枝が一本、地上1メートル余りの所にこちらへ向けて水平に伸びているものが、あたかもポキュッ!

と栓が外れる様にして生垣から離れ、そのまま水平に、ブンッ!!と私の足元目掛けてすれすれまで飛んで来たのだ。直径は3センチ程で、長さも人の背丈位あった。

あり得ない現象を見た。あたかも意思がある如く空中から全くの水平に。バサッと

音を立てて、足元に達した白い枝を前に完全に固まってしまった。そうしながらも

「…こういう場合、キャア~ッ!!とか言って逃げるべきシチュエーションだよね…だったら逆に近づくってどうよ?」等と混乱した頭で、訳の分からない事を考えながら、件のお墓に近付いた。もう脚はガタガタだったのだが、からかわれたままで引き下がる事はしたくなかったのだ。そして、「ああ、やっぱ軍人さんのだったね…」等と言いながらそこから去った。冷静さを取り戻し、これこそは紛う事無き脳内現象説の反証である事を確信したのだった。

今となっては、有難い体験だったと感じている。

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