第16話

以前住んでいた家の近所に、印刷屋さんがありました。

この方は、太古の郷土史といった珍しい事柄にも関心が

お有りで、研究もされていました。

地元の山が人口のものであるとか、当市域全体のどこを

掘っても人骨が出るんだとか、地球こそがこの世の宮で

ある等、ユニークな視点での著作もある方でした。

そもそも、ご先祖は戦国時代に夜盗の為に焼滅したとい

う「天皇院」という大規模な中世山岳寺院の別当か何か

の関係者だったそうです。確かに歴史上実在した知られ

ざる寺院群で、ちょうど比叡山の様な所だった様で、今

は、お菓子屋さんの包み紙に絵図が使用されています。

この方をある時、知り合いの霊能者が訪ねて来られたそ

うです。鹿児島の30代の男性で、市内のホテルに宿泊さ

れました。すると、その晩彼が寝ているベッドの上に、

幾人もの修験者の姿をした者達が現れ、覆い被さる様に

して口々に「この地は、決して発展しないであろう」と

言ったそうで、お蔭で一晩中眠れなかったと語ったと言

います。

私は、何だか妙に納得してしまいましたが、せめてこの

霊能者には「何で?」と理由の方も聞いといて欲しかった

なと感じています。

でもまあ、さすがの霊能者でもビビったんだと思います。

何しろ、身体の上にのし掛かられたそうなんで…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る