第4話

大伯母のお話の最後です。

彼女は大変信心深い人で、仏壇というか、棚の様な場所にたくさんの位牌等を

祀り、日々祈っていました。

自分が高校生くらいの頃、たくさんの位牌の中に、ちょっと変わったものがある

事に気が付きました。普通の黒塗りの位牌ですが、表の本来戒名等が記されて

いる部分には金泥で「男女数百名の霊」とだけ記されていました。なかなか立派

な位牌でしたが、不思議に思い尋ねたところ、家族の人から聞いたお話には驚き

というか、ちょっと感動しました。


江戸の昔、大伯母の先祖だった旗本のある当主が、役目柄今でいう刑事裁判の

ような事を担当していたそうです。扱った事案の中には、特に男女の心中事件が

多く、当時は重罪とされていた為、生き残った片割れの若者達にも死罪などの厳

罰が課され、それを否応なく担当したこの先祖は、個人的にはとても心を痛めて

いたという事です。

本人が亡くなる時の遺言で、これら薄幸の若者たちの後生を、末代まで供養して

欲しいと言い遺したそうで、それでこの大きな位牌を祀ることになったそうです。


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