第14話 気づかない「フリ」

俺は、どうなってる

何かおかしい。


教室、勉強、制服、ケータイ、テスト、マンガ、同級生


何もかも違和感を感じるようになってきた。

いつも通りの生活のはずなのに、モヤモヤしてしょうがない。



1番モヤモヤするのは友達のことだ。友達なのにすぐに名前が出てこない。

名前を聞いてやっと、「ああ、そうだった」と思い出す感じ。


そして、思い出す時、同時になぜだか少し寂しい気持ちになる。



前まではこんなことは無かった気がするのに、

これもまた、気がするだけで確信はない。

何もかも確信が無い。モヤがかかったように



最近は自分が自分じゃないように感じて仕方が無い。おかしくなってしまったのだろうか


もしかして今は現実じゃなく、夢の中なのかと思うことも多かった。


それをとくに感じるのは「懐かしい」と思う時だ。

懐かしいなんて、過去のことにしか思わないはずなのに、たまに今を懐かしいと感じる時がある。


もし、もしもこれが夢ならば覚めないでほしい。

ずっとこのままここにいたい。



いや、実は少し気づいてるんだ。気づきたくないから、気づかないふりをしてるだけなんだ。


ここは現実じゃない。

現実だとしたら絶対にわかるはずなのに、



一番知りたいはずの、彼女の名前がわからないから。


隣席の彼女、素朴な笑顔の彼女、真面目なようでたまにサボってる彼女、たまに馬鹿にしてくる彼女、明るい彼女、

きっと俺が恋してる女の子。


名前が知りたくて、友達なのに名前を聞こうかと思った。

でも、聞こうと思うと声が出なかった。


誰かが彼女の名前を呼ぶと思って耳を傾けても、誰も彼女の名前を呼ばなかった。

もしかしたら呼んでたとしても俺には聞こえていなかったのかもしれない。


ケータイのメールの宛先でわかるかもと思ったけど、そもそもアドレス登録は自分でしなければ名前は出てこない。

今でも彼女の名前は空白になっている。



どういうわけか、彼女の名前だけは知ることが出来ない。



知りたいのに、自分が知ることを避けているような気もする。

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