第4話 立派な大人

くそ…

せっかく人を好きになれたと思ったのに、夢かよ…

笑えてくるなほんと。


現実で恋出来ないからって

夢で恋するかよ。

思春期の男子高校生の妄想じゃあるまいし

もう俺は立派な社会人だ

もう立派な大人だ


立派な…

立派な人間になれているのかな…


なりたかったな。



さぁ、もうくだらないことを考えてる場合じゃない

仕事の支度をしないと

仕事を任されるようになった今が一番大事な時なんだ、

遅刻なんて許されない、ほかの事考えてる暇なんてない


期待に答えないと。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「今日お前おかしいんじゃないか?疲れているのか?

今日は早めに帰って休め。」


「はい…すみません…」


最悪だ…

まったく仕事に身が入らなかった。


ミスはするし、手は止まるし

あまりのいつもとの違いに上司にまで心配された

いや、呆れられていたのかもしれない

周りの人達の視線が怖かった。



仕事中

あの風景が、あの女の子がシルエットのように頭に浮かんでくる

あの感情が、胸の苦しみが襲ってくる

考えないようにすればするほど考えてしまう


顔も何も思い出せないのに


どうせ会えないなら、どうせ叶うはずもないのなら

夢になんて出て欲しくなかった

こんなことならやっぱり恋なんてしたくなかった。

せめて現実の、身近な人に恋したかった。



どうせ存在しないんなら

夢になんか出てくるなよ

いつもの日常を返してくれ

仕事だけに集中させてくれ



くそ…涙が止まらねえよ


また…出てきてくれよ。

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