第15話 記憶

ピピピピッ!ピピピピッ!



「朝か…ここは俺の部屋。高校生じゃない、今の俺の部屋」



あの夢を見るようになってからもうすぐ1週間、もう今の現状にだいぶ慣れてきた。

あの夢での高校生活と、今の現実での生活を繰り返す日々。


夢とはいえ、かなりリアルで意識もはっきりしている。現実だと錯覚してしまうほどに



数日前までは、夢のことはうろ覚えだったが、やはり夢を見る度にだいぶ覚えていることが増えていっているようだった。

あの子の名前以外は。



前まで、夢のことを覚えていたいとあんなに願っていたのに、

最近は覚えていることに喜びは感じない、ただ悲しいと思うだけだった。


現実と夢でのギャップに虚しくなるからだろうか。

もうあの頃のような青春時代に戻れないからだろうか。


それとも、他の理由が?



~~〜~〜~〜~〜~〜~

今日は仕事が休みで、久しぶりに実家に帰ることになっている。

実家に帰るのは数年ぶりだった。



「おかえりなさい。しばらく見ない間に老けたわね」

と、玄関から笑顔で母親が出てきた。


久しぶりに見た母親は少し白髪が増えてはいたが、まだまだ元気そうだった。



リビングには父親もおり、こっちも母親同様、少し白髪が増えていた。あと腹が少し出ていた。



「仕事はどうなんだ?」

「ご飯はちゃんと食べてるの?彼女は出来たの?」

などと両親からの質問攻めにあいながらも、久しぶりの楽しい時間を過ごすことが出来た。



そして、久しぶりに自分の部屋に入ると、昔と全然変わらないままだった。


ふと、夢のこともあり、学生の頃の何かがないかと探してみたら、中学の卒業アルバムが出てきた。

そこには、満面の笑みで馬鹿みたいにはしゃいでいる自分の姿が写っていた。


「懐かしいもの見てるわね。あんたこの頃やんちゃで手がつけられなかったわよ」

と母に横でちゃかされながらアルバムを眺めていた。


「懐かしいなぁ戻りたいなぁ…」

思わず夢のこともあり、声に出してしまった。

こころなしか母は少し悲しそうだった。



中学のアルバムを見終わり、次は高校のアルバムを見ようと探してみたが、なかなか見つからなかった。

「母さん、高校のアルバムどこにあるか知らない?」

と聞くと母の顔が曇った。


少し悩んだ後、母がどこからか、高校のアルバムを持ってきた。

まるでどこかに隠していたかのようだった。



その事に少し疑問を抱いたが、母がすごく神妙な面持ちだったので、何も聞かずに静かにアルバムを開いた。



アルバムには、高校生になった俺の姿、クラスの皆で一緒に写っている姿、部活動でのユニフォーム姿など、よくある普通の内容だったが、一つ違和感があった。



1年生の頃の写真に、自分が1枚も写っていなかったのだ。

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