第21話 逃避

~♪~♪~♪~♪ブ-ブ-ブ-ブ-

静かな部屋に、アラーム音が鳴り響いた。



「ん~、うるさい…どこだ。あった」


起きないと…でも眠い。


そしてまた目をつぶった。



「起きなさいよー!学校おくれるわよー!」


1階から母の声がし、だらだらと体を起こした。



リビングに行くと、母が朝食の準備をしながら聞いてきた。

「そういえばあの子とはどうなったのぉ?」



「え?誰のこと?」

誰のことかわかっていたが、無駄だとわかりつつも恥ずかしくてしらばっくれた。



「隣の席の子に決まってるじゃない。もう付き合ってるの?」

すごくニヤニヤしている。



「なんにもねぇよ!てか別に好きじゃねーから!ただの友達!」


「あら、そ~なのお~?」


今になってあの子の話を母にしたのを後悔した。



母にこれ以上からかわれるのを避けるために、さっさと朝食を食べて家を出る。




「はぁ…朝からあんなこと言われると意識しちゃうじゃんか…」

とブツブツ言いながら歩いていると


「やぁおはよー!何ブツブツ言ってるの?」


でた。


「あぁおはよう…今日はいい天気ですね」

目を逸らしながらよそよそしく言った。


「え?曇りだし、どこ見てるかわかんないし、何かのドラマの真似?」



何か勘違いしてるようだしそういうことにしておこう。




キーンコーンカーンコーン


今日は1時間目から水泳か、泳ぎは苦手でもないし、水は冷たくて気持ちいいから好きだ。


入る前のシャワーは冷たすぎてビックリするから苦手だけど。




「いやー水泳って最高だよな!」

と隣でタケルが女子の方をチラチラみながら騒いでいる。



他校では水泳は男女別々って所もあるらしいが、

うちの高校では男女でレーンは分かれるけど、合同で水泳の授業がある。



「お前はホント欲に忠実なやつだな。羨ましいよ」

と呆れたように言う俺もチラチラと女子を見ていた。



チラチラ見ていたら、あの子と目が合ってしまい、すぐに目を逸らした。


また、ちらっと見ると、少し恥ずかしそうにしているように見えた。


変態だと思われたかな…




そんな恥ずかしそうにしてる彼女が、ずっと前に亡くなっている同級生という事を、

現実で母から聞いたはずなのに、完全に忘れていた。



いや、この時の彼は、ここが夢の中だということも気づいてはいなかった。

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