第13話 少しずつ、少しずつ

「おはよー!」

と肩を叩きながら挨拶してきたのはあの子だった。

風邪を引いてたらしい彼女、今日は凄く元気そうだ。



「おはよう。風は治ったみたいだな」

平静を装ってはいるが内心嬉しくてニヤけそうだった。

ただ、彼女に会えるだけでこんなに嬉しいなんて



「タケル。マンガもってきたぞ」

と言うとタケルはすごく嬉しそうにこちらを向いた。


「待ってました!今日はもう授業真面目に受けれないわ!」

いつもだろと思いながらもスルーしといた。



「もうすぐテストだからちゃんと勉強しろよー

赤点とったら夏休み出てこないと行けなくなるからなー」

そうか、もうすぐ夏休みか



隣から会話が聞こえる

「うえ~赤点とか絶対取りたくない

夏休み少しでも多く遊びたいよ~」



「あんたは赤点なんて取らないでしょ。なんだかんだ優秀なんだから」


「まぁね~!」

なんていいながらピースしていた。



お昼になり、弁当を食べていると

彼女の弁当がいつもより少ないことに気づいた。

何気なしに聞いてみた。


「今日はやけに弁当すくないのな、ダイエットか?」


「ダイエット?!そんなに私太ってるようにみえる?!病み上がりなだけだよ!」

失礼なことを聞いたみたいだ。



タケルが誰にも聞こえないような小さな声で

「夫婦漫才かな?」

とか呟いていたけどスルーした。


恥ずかしかったから。



放課後になると、タケルはマンガを早く読みたいらしく、すごい速さで帰っていった。


授業中か、昼休みにでも読むかと思ったら、先生に取られたら困るし、ゆっくり集中して読みたいそうだ。


その集中を他に回せばいいのにな。



俺も帰ろうとしたところであの子に声をかけられた。

「ねぇ、悪いんだけど昨日の授業のノート見せてくれない?ホノカに借りるの忘れちゃった。だからお願い!」



なぜ俺に?ほかにいくらでもいるだろ。と思いながらも俺は喜んで貸した。

「字汚いけどそれで良いなら」


「ありがとー!明日返すね!」

といい、去っていった。


〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~


「ただいまー。母さんお腹すいたー」

「おかえり。今日は唐揚げよー」

いつものように晩御飯をたべ、少し家族と会話して、TVをみて、自室に戻る。



自室に入った途端、頭を抱えて崩れ落ちるように

ベッドに顔をうずめた。


今日1日、平静を装って過ごしていたが、



少しずつ、自分がおかしいことに気がついていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る