第四章 溶け合うホログラム
第19話 電波塔の頂上を目指して
クラッカーの
午前9時。
高さが600メートル以上なため、近すぎると見上げても全体が見えない。
「さあ。行こうか」
三番目に背の高い青年が、一歩前に出た。
「うん」
同意したのは、二番目に背の高い女性。ケンジの右側に寄り添う。クリーム色のスーツ姿。セミロングの髪は、内巻きにまとまっている。風になびいた。
「
一番背の高い、グレーのスーツの男性が微笑む。音を鳴らす
『
リスのようなものが
「アマミズは、役に立たない」
小走りでツインテールを
「
背の高いトネヒサが、
メンテナンス中のため、
その
「
「ですから、メンテナンスの
スーツ姿の男性が、頭を下げた。三十代。
「うーむ。しかし、なあ」
六十代の男性は、
「クラッキングによる
たれ
「まずは、これまでの
「はい。
建物から出たギョウタが、
「なんとかなりそうだ。だが、何が起こるか分からん。心の
鉄とコンクリートが主な材料のタワーを見る男性。
ガラス張りの入り口は閉じている。トネヒサが
ケンジたち4人は、
片開きのドアが右側から開いていく。
「
「なんだ?
十五歳の少女と、
ドアを開き続けるようにボタンを押していたウタコが続く。
「メンテナンス中という看板が、あったはずですが」
『
アマミズの声を、二人は聞くことができない。
「看板、見てないです」
「人がいないのは、おかしいと思っていたが」
立ちならぶ建物が
ほかに
黒い髪を手ぐしで整えている男性が口を開く。
「下に行けば、立ち入り禁止の看板があるはず。
「そうです。
ケンジとチホの言葉に、フウマはぎこちない笑みを浮かべる。
「仕方ない。下で、
「行こう。おじいちゃん。みなさん、またね」
二人がエレベーターに乗って、スイッチを押す。トネヒサが
ドアは閉まらなかった。
「おい。これは」
「メンテナンス中ですからね。私がハッキングで動かします」
ウタコに次の言葉を言わせず、キーを抜いたトネヒサがエレベーターから左へ離れる。ポケットに手を入れた。手袋はしていない。
左手で、青いデータフローメダルを
『アウト・オブ・オーダー』
アマミズが
ちなみに、
トネヒサの左腕に、青みがかった灰色の
右手で空中に現れたウィンドウを
「それでは、また会いましょう」
四人が手を振り、エレベーターのドアが右側から閉まる。ハルナとフウマが
「
ウタコは
トネヒサがメダルを右手で持ち、ケンジに差し出す。
「ほかにも、何か
「
「どうしたの? ケンジ。
ばつが悪そうな顔を見て、チホは悲しそうな表情になった。
「全力でクラッキングの相手をすると、エンチャントまで手が回らない」
「そんなことか。手を
「アマミズが、ここで役立てばよかったのですが。
『
見えているアマミズを
「二人の手が
プログラムの中にいる者が、それを
データの
チホの大きな目に力が入る。そのまま微笑んだ。ウタコも笑顔を向ける。
「任せて」
「任せろ」
「私は、二人を信じます」
「分かった。任せる」
トネヒサから、青いメダルを受け取ったケンジ。左手で
『アウト・オブ・オーダー』
アマミズの声とともに、左腕に
現実へのハッキングにより、データの流れが
メダルを持ち替えて、腕の
ケンジが右手をのばす。チホが温かい手でにぎった。さらに右にウタコ、最後にトネヒサが手をつなぐ。
『エクセキューションカード、
体の前でプログラムが組まれた。カードが完成する。
『
アウト・オブ・オーダー
「空を飛んで、
「わたし、上を見る」
「全力だな、確かに。私は、横のデータ」
「下は任せてください。万が一、
肩のアマミズは、何も言わなかった。
三人の言葉を聞いたケンジ。カードによる
音もなく、
「風で巻き上げられるのかと思ったら、
「体にかかる力を変更する場合は、
手をつないだ四人は、
「
「いや。エレベーターに
チホの質問に答えたケンジが、
「おいおい。
「このほうが、データの
穴を通り抜ける四人。見た目は空を飛んでいる。最初から
エレベーターの
ガラス張りの部分が北側なため、明かりが
しかし、四人はデータとして世界を
「
「そうだよね。次に通る人たちが、危ないもんね」
チホが上を見つめる。
「
「
ウタコに
上を向いて
「私、やることないぞ」
「何も起こらないに、
『
肩でアマミズが
手を
「
「気を抜かないでください」
上から、
「プログラミングに
次々と
「すごい。けど、負けていられない!」
チホの
次々とぶつかり、消されていく鳥。
鳥を二人に任せたウタコ。
「
遠くの鳥の動きを
「
足の下から
「お前がいるから、こっちに集中できる。あとで働け」
「
上へ移動を続ける四人。
急に、鳥の
ウタコが
「どう考えても、
『トラップに、
上から来たのは、スズメのような小さな鳥。別のデータを
「動きを止めるのは任せて。ネズミに
ケンジが、スズメの動きを封じる。
そのあいだに、チホが
「別の人が書いたプログラム。これは、モモエ?」
「なるほど。同時にデリートする必要があるようですね」
足場のデータ
「お前は下!」
ウタコが続ける。
「で、私が
「動きを止めてから、消す」
「うん。合わせる」
いったん
「いくよ」
ふたたび動きが止まった。ふたつのデータが同時に
次の攻撃に
何もない。いや、
データの乱れはなく、
横の
「また、それか」
「さっき、説明したでしょ?」
データが書き換えられ、穴が消えた。うしろには元どおりの
目の前は、地上から600メートルの高さ。タワー
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