第16話 関塚探偵事務所とは
まだ
その
外へ出る男性。ちかくに、背の高い建物は多くない。
日が昇りはじめたことで色がはっきりしてきた、紺色の屋根。うすいグレーの壁と、ドアの近くの看板もよく見えるようになる。となりの庭と違って、植物は植えられていない。
グレーのスーツを着た長身の男性は、白い手袋をしている。金属製のトングを、カニのはさみのように動かす。
ご
「おはようございます」
「うむ。おはよう」
『おはよう』
トネヒサの左肩で白いものが
長身に見合った
ドアを開け、家に入る。アマミズに
つぎに
「いただきます」
『ゆっくりと、よく
午前7時ごろに、トネヒサの朝食は終わる。
北の部屋に照明をともし、中心部へと進む。ならんでいる五つの机は金属製で、青みがかった灰色。一番北の席に着いた。アマミズに、南西の机に座るよう命令。最近の
PCのキーボードを操作中、
「おはよう」
「おはようございます」
『おはよう』
最初にやってくるのは、決まって
「トネヒサ。バトルしようぜ」
「今ですか? ケンジさんとチホさんが驚きますよ。
ウタコは、
「集まったら、みんなでやるぞ」
「そうしましょう。
注意しないトネヒサ。逆に微笑んでいた。
プログラムで
微笑する男性と、笑ったり悩んだり忙しい女性の話は続く。
「おはようございます」
「おはよう」
明るい声と、あまり
「おはようございます」
「おはよう」
『おはよう』
机の上のアマミズに目をやり、男性が席に着いた。先に
「よし。メダル貸せ。バトルの時間だ」
「必要かもしれませんね」
トネヒサが、胸のポケットから青いメダルを取り出した。ウタコに渡す。
北東の席に着いている女性の頭に、
「いったい、何をするんですか?」
クリーム色のスーツ姿。可愛らしい顔つきで、
「ハッキングバトル!」
背の低い女性が叫んだ。南東の席で、やる気のなさそうな男性が口を開く。
「確かに、クラッカーの
スーツの部分は、こげ茶色の上着だけ。下のシャツとパンツは普段着。黒髪は軽く整えられている。
「いくぞ。データフロー」
『アウト・オブ・オーダー』
左手でメダルをにぎったウタコに
データの流れが見える。メダルにより、現実を
「ソフトウェアテスト済み。こいつを使う」
『エクセキューションカード、
小さな体の前で、プログラムが組まれていく。形になり、右手でつかむ。
「セット」
『
「どうする?
一人だけ席に着いたままのケンジが言った。ウタコの口に力が入っている。
「立って、
「ああ。うん」
立ち上がったのを見届けてから、
「まずは、トネヒサ。お前だ!」
「はい。よろしくお願いします」
微笑みを絶やさない、長身の男性。部屋の北東に立った。ウタコが南東に歩いていき、
「分かりやすい見た目のプログラムを、三回当てたら勝ちだ」
「
トネヒサが、風を
「なるほど。ぶつけられると、丸が減るんですね」
明るい表情のチホ。プログラムを
「
ウタコは、体の前にデータの
「巨大なものを組むためには、時間が必要。あれで
「
ケンジの説明で、チホが
「イレクトリシティ!」
イにアクセントが置かれ、リで、舌を丸めた発音がおこなわれた。
トネヒサも、
どちらも難なく
「最初は、分かりやすく
「そういうことだ。直線的な動きでいくぞ」
三つの
「きっちり
「意表を突いたつもりでしたが、あれは防げましたね」
二人に説明する気配がないので、ケンジが言う。
「
「わざと当たったってこと? あ。練習だからね」
柔らかい表情になったチホが、再び
「カーブ!」
「部屋の
バトルを続ける二人が、
「ここからが、
直進する電気の
「おっと。危ないところでした」
丸は減っていない。
「空中のプログラムを
「なるほど。練習しないと」
「
「練習にはいい」
ウタコのお
四人のハッキングバトルは、昼まで続いた。
「データ
人差し指を
「そうですね。メダルの使用はリスクが高いので、こちらで
PCのディスプレイを指差したトネヒサ。続いて、ケンジを手招きする。胸のポケットからメダルを取り出して、手渡した。
昼下がりの日光は、部屋を直接照らさない。天井の照明を浴びて、ウタコがにやりと笑う。
「丸投げして集中するのか? 望むところだ」
「というわけで、あとは頼みます」
二人の
プログラムは
「はい。
チホが対応する。
案内したのは、
「ペットがいなくなったんです。探してください!」
「
「とんでもないです。
「命が失われることに比べたら、
目に涙を浮かべ、テーブルに体重を
「まだ、分かりません。探しますから。顔を上げてください」
なだめるチホ。
「じっとしていられない。私、探しに行きます!」
「待ってください。一緒に探しましょう」
「
『エンチャントの
向かいの机の上から声がした。AIにより
「ペットの
胸のポケットに右手を入れるケンジ。青いデータフローメダルを左手で
『アウト・オブ・オーダー』
左腕に出現した
『エクセキューションカード、
体の前でプログラムを組み上げた。完成したカードを、
『
アウト・オブ・オーダー
「
『エンチャント・2』
見た目を
トネヒサとウタコに力を分け与えていない。見えているのはケンジのみ。
絵の
「まずいな。
困った顔をしていた。
クリーム色のスーツ姿。白いパーカーの
「そうですか。ありがとうございます。次、行きましょう」
「疲れたなんて言ったら、ミルクちゃんに笑われるわ」
学校の近くを歩く。中の建物は、
「おーい。やっぱり、
「チホさん、おはようございます」
制服姿の少年と少女が、門の入り口へと歩いてきた。ナナイセ
「ユズルくん、ハルナさん。おはよう。困ってるの」
「ミルクちゃん、見なかった?」
すかさず写真を取り出す
「あ!
「今も、この中に?」
いまにも門を乗り越えそうな勢いの、
「ケンジ。
データを
「
空中にある
立ち入り
「おかしい。データどおりにやっているのに」
すこし離れた場所に座り、5分待ったケンジ。ゆっくり、
「
座るチホ。ネコが近づいてくる。ケンジが立ち上がろうとして、やめた。
指の匂いを
教室から見ていたユズルが笑う。
「やったぜ。でも、レイトなら楽に――」
「ユズル。ダメだよ」
ハルナの言葉に、少年は
「なんでもない」
外を見ていたレイトが、二人に笑顔を返す。外を見て、お
学校から出た三人と一匹。
ケンジは、
「ちゃんと
「はい。これから、似合う
泣きそうな
「別の方向から
ぶつぶつと言いながら歩いていくケンジ。データを
教室では
「
嬉しそうなハルナを見て、レイトも微笑んだ。
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