第18話 すべては情報の投影にすぎない
「久しぶりな気がする」
「
「タワーのある南を見てたから。東を向いたら、見えたのか」
風にゆられる髪。あまり整えられていない。
「いい風。帰りたくないなあ」
大きな目を細めるチホ。クリーム色のスーツは、あまり風の影響を受けない。セミロングの髪がなびいた。南東から二人にかかる木の
「珍しいね。つきあうよ」
ケンジの表情は
見ている物は、データの
土と植物におおわれた足元も、肌にふれる
いつもならすぐに
ハッキングのときのような、
「ん?」
振り向いたチホを見て、
「どういう風に、データを
「わたしには、何を言ってるのかが、よく分からないよ」
笑い声をあげる二人。
そのうしろから、2つのデータが近づいてきた。
「メダルがないから、相手にするだけ
振り返らずに、ケンジが告げる。うしろを向くチホ。近付いてくる男女は、落ち着いている。優しく
「たまには、のんびり話すのも悪くないだろ」
静かに声を出したカズヤ。赤いシャツの上に、茶系の上着。黒いパンツ。
黒い短髪の男性は、木製の椅子に座った。木製の机をかこんで、八人まで座れる場所。
「デートの
その隣に、モモエが座る。白いドレス姿。顔をうすい布で
「違うよ。デートじゃないよ」
慌てるチホは、二人の座る場所に
大きく息を吐き出したケンジ。
「もう一回、言っとくか。オレは、カズヤ」
「アタシは、モモエ。よろしく」
ケンジは何も言わない。チホが
「チホです。よろしくお願いします」
「なんでそんなに、
苦笑いするケンジを、カズヤが鼻で笑った。机の上で指を動かす。
「生きる
表情を変えない青年。
「そのために、クラッキングを続けているのか?」
「もうすぐ分かるぜ」
隣を見るチホに、モモエが
「自分に正直になったほうがいいわよ」
「失ってから
白い服の女性は、すこし悲しそうな顔。海の向こうに目をやる。ハッカーの二人に対し
カズヤが席を立つ。モモエが続いた。
休日。
ケンジの自宅から北東に、四人が集まった。
開く、
「困ったな。わたし、マナー知らないよ」
「
「
「
広い庭の先にそびえる、洋風二階建ての建物。横に長い。黒に近いレンガの壁で、白い窓。黒い屋根。
中に入り、靴を
白いカーテンは開いている。ソファの近くにある
あっという
部屋の
「もし、
となりに立つケンジと、約束を
テーブルをかこんだ四人が、離れて見守る。
小声でシオミと話す、ウタコ。
全員が部屋を出る。
靴を
遠ざかっていく四人。大きく手を振る、笑顔の少年。
となりで見つめる女性。優しい目で。
南からの日差しに照らされる、紺色の屋根。
薄いグレーの壁も、光を反射する。
あまり気温は高くない。まだ、夏の暑さにはほど遠い。
「休みだっていうのに、なんで、こんなことに」
エプロン姿のウタコは、いきどおりを
キッチンとダイニングルームを
「まあまあ。一緒にいたほうがいいですから。クラッカーの
エプロン姿の
北の部屋で、机の上にいるアマミズ。
「料理じゃなくて、ほかに、することあるだろ」
「たまには、いいよね」
エプロン姿のチホは、
「データでは
エプロン姿のケンジ。隣の女性を手伝って、
突然、ウタコが
「トネヒサ! 手伝え。食べさせないぞ!」
「
「うるさい。早く、こい」
ならんで、
トネヒサと同じく、ケンジも
「
データのように手際よくできず、
「
「
「お
「平日の昼食を、
「今度の
ウタコも
「
「仕方ないな」
白い壁の、四階建て。
中は、やわらかな色であふれている。
そちらに
左腕を
黒いシャツの少年が、エレベーターへと乗り込む。
四階で降りて、部屋の前に立った。生きとし生けるものが
「お
返事を待たずに、レイトが
「頼んでいないっていうのに。ほかにすることはないのかい」
少女が、いつもどおりの
腰から頭にかけて、
二人は同じくらいの身長。同じように
微笑む少年。
「
少女は
「それはまず、自分の
左腕を動かすそぶりを見せない、レイト。少女に
「
「それで? クリエイターに頼む、なんて言わないよね?」
レイトがベッドに
「ぼくたちに協力してくれれば、
「すこし時間がほしいな。いろいろと、やることがあるからね」
目を見つめる少女。少年が目をそらす。
「時間が残されているとは、思わないけどね」
入り口へと歩く。扉を開く前に、笑顔で振り返った。部屋を去るレイト。
エミカが、ポケットに手を入れる。つかまれた緑のメダル。左手で持って、
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