第10話 悪を切りさく光の申し子
ニコヤマ
コンクリートで固められている
平日なので、家族連れよりはカップルのほうが多い。
とはいえ、人はあまり多くない。若い男女が長椅子に座っている。昼はまだ先。
メガネをかけている男性は、落ち着かない様子。
「しまったな」
「どうしたの? 乗り物酔い?」
ケンジを心配するチホ。男性は女性に顔を近づけて、小声で話す。
「PCがないとは思わなかった。
「乗り物は?」
「ひとつ15分かかるとしても、2時間しかもたない」
「座ってるだけでも、怪しまれないよ」
「なるほど。
言いおわる前に歩き出す。
「データの乱れがあるのは、ここ。ヒーローショーの
「何か起きると思う?」
「やるなら
「そんな。どうやって防ぐの?」
「防がない。
「なら、何も起きない?」
「高い建物に
「高いハッキング
「かもしれないし、別の理由かもしれない」
ケンジが、悲しい表情で外を見つめる。
「人の気持ちなんて、分からないよ」
南東からの光が差す。メガネに反射して、レンズの向こうを隠した。何も言わずにケンジを見つめるチホ。
「行ってみよう。ケンジ」
「え? どういうこと?」
ワンピースの女性が、男性の手を引いて進む。
すりばち
「お客さん、少ないね」
「ここで何か起こしても、意味が
隣に座る二人。ヒーローショー
『どこだ! アクセス!
加工された声が
体に力を入れて見守るチホ。ケンジがあくびをしたとき、怪人が手から光る
「すごいよ。本物みたい」
「みたいじゃない。えーっと。ここではまずい。トイレ」
客の数がすくないのが幸いした。
「ヒーローは何をしているの?」
艶めかしい体つきの女性が言った。長い髪。
「アクセス! 助けてー!」
子供が叫んだ。家族連れがいる。ケンジはのんびりとその場を離れていく。チホが追いかける。ぶつぶつと
「おかしい。これは、まるで……」
「どうしよう」
二人はトイレに入らない。ヒーローショーの裏手の、時計塔へ向かう。建物の
「ハッキングの
胸のポケットから、青いデータフローメダルを取り出すケンジ。
左手でメダルを
アウト・オブ・オーダーが左腕に現れた。現実へのハッキングにより、データの流れが
握っていたメダルを右手で持つ。左腕の
「まずは、ヒーローショーのデータを取って、
空中で
「ソフトウェアテストせずに使うと、バグがあるかもって、
心配するチホに、ケンジはそっけなく返す。
「時間がないから仕方ない」
「アクセス!」
ケンジが、ヒーローの姿に変わった。看板に
『どうした!
メタリックな橙色の
身長195センチメートル。体重90キログラム。パンチ力、1トン。キック力、2トン。
ジャンプ力、13メートル(ひと
建物内にいる、ヒーローショーのスタッフは眠らされている。このままでは、
いまこそ、ヒーローの
『
メタリックな青緑色のヒーロー。アクセスの口から、
「
『何? まさか――』
「子供の夢を壊さないように、ヒーローとして
着ぐるみヒーローを見上げるチホ。
本物そっくりのホログラムとして現れたアクセス。身長は、190センチメートル。中の人は女性よりも背が低い。
いや。空中に足場を
『分かった。やってみる』
「違うでしょ?」
『夢を壊す悪は、この
『そこまでだ! リード!』
ヒーローショーの
「アクセス! かいじん、やっつけて」
『おう。任せろ! 少年!』
『待ちくたびれたぞ。お前の
ちかくの席に座る子供に向けて、リードが左手を
『
アクセスの言葉に反応して、左手を動かすリード。狙いを変える。
データの流れが変わった。ものすごい早さでプログラムが組まれていくことが、メダルを持つ者には分かる。
「アクセス! がんばれー!」
「しっかりして!」
客席で見守るチホが心配していた。眉を八の字に下げ、気持ちを
『子供ごときのために、
『夢を壊す悪は許さない!
右手を
相手の使用した
『この
胴体に
『いくぞ! ダブルチャージ!』
説明しよう。両腕にエネルギーを集中させたアクセスは、
『
アクセスと似た
どちらも、相手を
両手を
『トリプルアクセス!』
『トリプルリード!』
左腕に
『
「アクセス。ありがとう」
データの乱れはなくなっていた。
決めポーズを取るアクセス。
メダルを胸のポケットにしまった、
左脚のポケットから
「この
「よかった。無事で。でも、どうやって消えたのかな?」
「バックドア。あらかじめ通路を作っておいて、
画面を見る表情は
詳しい
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