第17話 誰にでもできる簡単な依頼
学校。教室。
モノクロームの
学校での
白と灰色と黒の世界に、制服姿のチホがいる。
差し出す手に、メダルがある。白、あるいは灰色。
「お礼? なんだったかな」
データフローメダルではない。なんの
夢だと
ちかくに現れた
「最近、会ってない気がするな。気になってるのかな」
微笑むレイト。その姿が消える。
空中に、黒いぬいぐるみが現れた。続いて、たくましい体つきの青年が姿を見せる。見覚えのある顔。
「お前は!」
「カズヤ」
名前を告げられて、
「これは、夢のハッキングか」
「どうした。セキュリティはこんなものか。オレの勝ちだ」
二人と一つのホログラムしかない世界。楽しそうな顔のカズヤに、
「それでいい。
笑うカズヤが、ケンジから目を
「違うよなあ? ムゲン」
『いちいち答える必要があるかな。そんな
少年のような声を出した、宙に浮く黒いもの。リスに似た姿。
ケンジが
カズヤが右手を大きく振り、力強く
「オレたちが、現実クラッキングを続けるのは、世界の
「違う。どの
「それが分かるなら、オレと戦う
「戦いだと?」
「
「待っていたってことか? まさか――」
ケンジが
東側の窓から、カーテン
「カズヤ。ムゲン。知らない名前だ」
夢の内容をはっきりと思い出せる。パジャマ姿の青年が起き上がった。
「おはよう」
「おはよう」
微笑むチホに
クリーム色の集合住宅の二階。二人が歩き出す。階段を下りるときも、歩道をならんで北へ歩くときも、夢の話をしなかった。やさしく照らす朝日も目に入っていない。
民家にまぎれて建つ
「夢に、カズヤとムゲンが出てきた」
「誰? 学校の知り合いじゃないよね?」
チホの大きな目が見つめ続ける。すこし困ったような顔になるケンジ。
「クラッカーと、宙に浮く黒いぬいぐるみ」
「お前! 夢を乗っ取られてるじゃないか!」
立ち上がるウタコ。トネヒサは椅子に座ったまま。落ち着いている。
「
「
買い物のメモを読み上げるように、
「
「逃げることは許さない、っていう、
「考えても仕方ありません。夢に
トネヒサが
「寝るかも。寝たら、夢の中で教えてくれ」
言うとすぐ、金属製の机に
説明が終わる。
ケンジとチホが、
そのあいだに、トネヒサはメダルの力を
「なるほど。
「そういうことです。夢でも時間は
そして、次の
ダイニングルームに入る
木のテーブルを囲んで木の椅子が四つある。床は木のフローリングで、壁も木製。柔らかな照明が
「ケンジさんが、お
笑顔で席に着いた少年。左腕を
「レイトがお
となりに口をとがらせた少年が、すぐ正面を向く。ウタコに微笑んだ。
「おねえさんは、優しそうでいいよね。シオミさんなんて、ずっと
目を見開いたツインテールの女性。顔をだらしなく
「優しそうな、お姉さん? レイト。もっと言ってもいいぞ」
「
トネヒサが告げた。左肩にアマミズがのっている。向かいのシオミに反応はない。レイトは残念そうな顔になった。
「うーん。待ってもいいけど。遊ぶもの、ないぞ」
ウタコの柔らかい
「遊びではありません。
「また今度、来ればいいよね。そうそう、
少年は、たいしたことではない、という
「
「それが、おかしいんだよ。
楽しそうに伝えた少年。隣の女性が
「
「なるほど。ご
「
座っていても長身を隠しきれない男性が、左手の手袋を外した。胸のポケットに右手を入れる。中の物を取り出し、左手に置いた。
青いデータフローメダルをにぎる。
『アウト・オブ・オーダー』
肩の白いものが、かわいらしい声を出した。ウタコは
トネヒサの左腕に、腕時計よりも大きな
「CからGまでの
「確かに
「そうですね。まずは、
『エクセキューションカード、
体の前でプログラムを組み上げたトネヒサ。右手で持って、左腕の
『
「
『エンチャント・2』
高さの情報が優先され、紙に絵が
「トネヒサ。東だ。私は、西を見る」
「さすが、
「なんだ? 急に。
不要な紙がひっくり返されていく。データを
「
隣に座る女性の絵は、
「仕事の
「分かってるよ。シオミさん」
二人の
「水の中に、何かあるぞ」
「移動と停止を繰り返して、
「そっちにもあるのか。同時に消すぞ」
「では、デリートします」
空中にウィンドウを開いている、ウタコとトネヒサの絵。手が折れ曲がることなく、座ったままの表示で操作されていく。
止まった
「
「ええ。場所を記録しました」
絵が変わる。笑った顔になった二人。外されるメダル。
「
隣を見るシオミ。少年は、席を立つ
「すごい力なのに、エミカさんとは違って、
微笑むレイト。トネヒサの肩をちらりと見る。すぐ男性の顔に
「運がいいだけ、じゃないですか?」
「
隣を見つめる男女。シオミ以外が笑い声をあげた。
「今度、ぼくの家に来てよ。トネヒサさん。
「レイト」
ショートヘアの女性が、表情を
「そうですね。ぜひ、ケンジさんやチホさんも一緒に」
「大丈夫だ。レイトを取ったりしないぞ。お姉さんは、優しいからな」
小さなお姉さんに、少年は
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