第9話 データがもたらす現在
晴れ渡る青空。すがすがしい空気。
長身の男性が
住んでいるのは、
ゴミを発見。トングという金属製の道具でつまんで、
そろそろ、三人の社員がやってくる時間。トネヒサが入り口へと向かう。左肩の白いぬいぐるみは、会話を求められていないので
和服の男性と目が合った。
「おはようございます。何か、お困りですか?」
「
トネヒサの笑顔に対して、シワだらけのいかつい顔で返す
「あ。おはようございます」
いまにも消え入りそうな声で
「ん? おはよう」
「おはようございます」
四人を
「
「
『
ぬいぐるみが
「
『
返事に肩を落としたウタコが、トネヒサを見る。入り口を開くようにうながした。
木に囲まれた内部の、北の部屋。席に着く四人と、一つのホログラム。
南東の席で、半開きの目をしている青年。キーボードをひたすら叩き続ける。PCのディスプレイに横書きでならんでいく、英数字と記号。
右隣の席のチホは、心配そうな表情。横目で見た。ケンジに声をかけず、自分のディスプレイへと視線を戻した。
「二人を仲直りさせる方法、教えて」
『
「なんだよ。役立たず」
北西の席から右隣に話しかけたウタコは、
「なに? トネヒサと
「
ケンジとチホが、ウタコを慰めた。
「ケンカしてない。私は。ケンジとチホのことだ」
「別に」
「
見事な
「助けて。トネヒサ。二人が見せつけてくるよぉ」
『アウト・オブ・オーダー』
「アマミズには言ってない! って、ん?」
「データの乱れを
「ここの五つのPCを、サーバとして使えるようにしたからか」
サーバとは、データを
『エクセキューションカード、
空中にカードが現れた。右手でつかみ、左腕の
『
ウィンドウに表示される遊園地。あまり大きくはない。町の外れに位置し、重要な何かがあるわけもなく、緑が多い。
「データの乱れ? いや、わざとでしょ」
すっかり落ち着いた様子のウタコが、切って捨てた。
現場からにじむ、途中で口調を変えたような
組み上げるプログラムに、人それぞれの
「
「危ないよ。どうすればいいのかな」
やる気を見せる男性と、不安そうな女性。二人を見て、トネヒサが話題を変える。
「この、
「なんだ? 照れるな。
「ちょっと名前が長いと思いませんか?」
あたりは静けさに包まれた。ケンジが口を開く。
「
「それ、普通のカードじゃん」
即座に反応するウタコ。
「えーと。思いつかない。よく見えるカード」
「なにそれ。メガネ? あ、思いついた。エンチャントカード!」
「
『エンチャント・2』
見える景色が変わっていく。
ペラペラの紙に絵が
「この表示方法、思いついても実行しないでしょ。普通」
「見やすさを重視しただけ。で、いま切り替える意味ないよね?」
ケンジの顔は変わらない。絵でも変わらず、まとまりのない黒髪。
「はい。すこし、衝撃を
トネヒサの顔は微笑している。背が高い。
「クラッカーへの
チホの顔が、目の大きな絵になる。セミロングの髪は、絵なのでなびかない。
「ケンジさんとチホさんに、デートしてもらいます」
女性二人の顔が、驚いたものへと変わった。
メダルが外され、
「私がエンチャントを使ったまま、ウタコさんとデートするという案も考えたのですが」
「デートから離れろ。トネヒサ」
「ほかのカードが使えない上に、
「おい!」
立ち上がるウタコ。すぐに座った。
「エンチャントか。四人がかりで相手できるのはいいけど、
「相手の
ケンジとチホが意見を
「そこで、二人の出番です。
「
ウタコが、机にあごをのせた。隣の机の上で、アマミズが反応する。
『思いやりの心が、大切だよ』
「相手は、二人以上の可能性が高い。全員で向かったほうがいいと思う」
「うん。そうだよね。そのほうがいいよね」
となりに座る男性に
「いえ。人数が増えると、不自然な動作が目立つものです。なので、頼みます」
立ち上がったトネヒサが、ケンジに近づく。金属製の机に青いメダルを置いた。自分の席へと戻っていく。
「
「
「う。そうだな。ケンジ、チホ。がんばれ」
ウタコの手は震えていた。小さな体の前で両手を
「それで、このまま?」
「自宅で着替えてから向かってください。あと、今日はそのまま帰ってください」
「じゃあ、行こうか」
メダルを胸のポケットに入れて、男性が席を立った。
「いってきます」
続けて女性が立ち上がり、二人が部屋を出ていく。
「髪型整えろよー!」
ウタコの声がひびき、入り口のドアが閉まる。
歩道を歩き、同じ方向に歩く二人。
同じ建物へ向かう。クリーム色の集合住宅の二階で、別の部屋に入った。
自室で上着を脱ぐケンジ。ベッドの上でひっくり返す。メダルと、歯ブラシと、
メダルを胸のポケットにしまった。白地に青色の
木の机の引き出しを開けて、メガネケースを取り出す。奥で光るまるい物には
「髪型?」
つぶやいた。洗面所に向かう。鏡を見て、手ぐしで適当に整えた。
午前9時。右隣の部屋のドアが開く。
「待った?」
セミロングの髪型の女性が出てきた。ワンピース姿。上側が黒色で、胸のふくらみから下が灰色。バイカラーと呼ばれる。手には鞄。
「別に。
「うん。いいね。髪型」
チホは緊張していた。
二人はならんで歩き出した。建物から出て、いつもとは違う歩道を西へ歩く。
バスが
となりの席に座った。肩が
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