第20話 定められていた過去と未来
午前9時30分。
ムサシノタワー
南側から到着した青年たちが、北を向く。ケンジが右手で
その
「やけに早いじゃないか。待ちきれなかったか? ケンジ」
茶系の上着に黒いパンツ姿。たくましい体つきのカズヤ。
左腕には、赤色を含んだアウト・オブ・オーダー。
「カズヤ」
すこし
「仲良く手を
つづいて、女性が上から現れた。
胸の前でネズミのプログラムが組まれていく。すぐに消えた。
二人は手を
「仕方ないよ。そうしないと、力が使えないんだから。ね。おにいちゃん」
少年の声が
「レイトくん?」
「なんで、
「おかしな点はありました。しかし、ここに現れるとは思いませんでした」
「
レイトの
「ムゲンのサポート
広場の中心。金属のタワーから南寄りの場所に、ケンジたちが
『
レイトの肩で、黒いものが
ムゲンは、
『アマミズに、答える
「
トネヒサが
「ほかに、何か言うことあるだろ」
するどい
北東から、しずかに風が吹き抜ける。
ただ、青年に
「
一歩前に出た青年。ほかの三人のクラッカーは、動こうとしない。
カズヤが見つめるのは、一人だけ。
その人物が、となりの女性の手を離した。一歩前に出る。
楽しそうな表情を
「手を出すなよ。お前ら」
目に映るのは、風に黒髪があおられた青年。ボサボサになった頭を手で軽く整えた。
前に出たケンジは、左腕の
「エンチャントを使う」
『エクセキューションカード、
アマミズが、プログラムどおりに声を出した。トネヒサの左肩の上で。
すぐに完成するカード。右手で
『
エンチャントの
笑い声をあげるカズヤ。
「
「こうしないと、みんな
ツインテールが
「
「そうだね。わたしも」
「
チホとトネヒサも、南西へ動いた。
ヒーローショーで
吹き抜ける風。
カズヤが動いた。オオカミのようなプログラムを組む。
ケンジが対応する。同じようなプログラムを組んだ。
激しく火花を散らす、二匹のオオカミ。
「もう何度も戦っただろ。
「どちらが上か、知りたいだろ? お前も」
データの流れを見ている人たちには、プログラムの
モモエが息を吐き出した。シオミに流し目を送る。
「やっぱり、似ているわね」
「どう思います? レイト」
「とぼけるのが、うまいよね。二人とも」
微笑む少年。現実を
あわく光るネコ科の
お
「
ケンジが、アウト・オブ・オーダーに右手をのばす。青いメダルを取り出した。左腕の
何人かが、
カズヤもその一人。すぐに顔つきを変え、
「オレを、ただのコピーだと見下しているのか!」
「違う。どちらかといえば、
ケンジの
カズヤは
ふてくされたような顔のウタコ。
「おい。
「
「どうしよう」
三人の目には、データの流れが映っていない。チホが、セミロングの髪をいじる。悩んでいた。
「ちゃんと、ボコボコにしてから
左手の
「本人に任せましょう」
メダルの力が使われる
「思ってたのとは、違う
『人数と
「仕方ないよ。自分のことで
『データを取る必要がある。レイト』
黒いものによる、
ピンク色のドレスに包まれた、
「何? 聞いてないわよ」
「ムゲン。何をするつもりですか」
モモエにつづいて
「いくよ。リミッター
『
レイトとムゲンの周りで、データが乱れる。メダルを使っていないケンジにも、感じ取ることができた。すぐに、左手で青いメダルを
「
『アウト・オブ・オーダー』
遠くで言うアマミズ。ケンジの左腕に、腕時計よりも大きな
『エクセキューションカード、
完成したカードを、すぐに
『
アウト・オブ・オーダー
「やめろ!」
言葉は届かない。データの中心で、黒い風が吹き荒れた。
レイトが、左腕の
「アウト・オブ・オーダー」
左腕に取り付いたムゲンが、黒い
「
カズヤに対しても、返事は返ってこない。
「データフロー」
手の中に、三枚のメダルが出現した。赤、緑、青。
左手を強く
「まさか、この
「クリエイターってことか? ムゲンが?」
『
トネヒサとウタコへの答えを、アマミズは持ち合わせていない。トネヒサの左肩に座り続ける。
右手でメダルを持ったレイト。左腕の
「レイトくん。どうして」
チホの声にも、返事が返されることはない。
『
左腕から
「できない」
デリートという言葉に
『
カズヤが、
「AIが違う。なんだ、こいつ。
「
『
「うっ。ああああ」
苦しむレイト。よろけて、両手で何かを
シオミの口に力が入る。モモエは目を
「ごめん。カズヤさん。ケンジさん。逃げ……」
レイトが動きを止めた。閉じていた目を開き、表情が
『
少年の口から、ムゲンの声が
『ただのワームに
レイトから発せられた声。
「違います! これは
長身の男性が
「当たり前じゃん」
やる
「クリエイターじゃないってこと?」
「だったら、戦うことすらできない。
強い口調で
隣の女性がうなずいた。
少年のデータは、少年の姿をしていない。もはや
これまで見たことのない、
レイトに動きはない。
カズヤは、左腕に
「カードを使って、あいつをぶっ飛ばす! 手を
のばされた右手に、モモエの左手が
「シオミ!」
呼ばれた女性は、別方向へ歩いていった。
黒いシャツの少年の隣に立つ、ショートヘアの女性。ヘアバンドをつけていて、髪は大きくなびかない。はるか下に見える
ケンジたちは黙って見つめるのみ。
「何をしてる! レイトを助けるぞ!」
カズヤが叫んでも、シオミの反応はない。
『
「なるほど。
モモエによってアウト・オブ・オーダーに差し込まれ、
『
ムゲンが言い終わらないうちに、データの
シオミが少年の
データの鳥を放つケンジ。
ふたたび、シオミが少年を守る位置に立つ。鳥をデリートしきれず、レイトをかばう。ケンジが鳥を消した。
左手を振り上げる、
「取り囲むぞ! お前ら」
「その案がよさそうですね」
ウタコとトネヒサが、移動を開始した。
「命がけで守って。シオミさん」
レイトの口から響く、優しい声。ケンジの
「データを、心を
「ひどい。助けないと。助ける!」
ムゲンは何もしない。少年の体を
少年に向け、悲しそうな表情のまま微笑んだシオミ。取り囲むハッカー四人とクラッカー二人を、
「ぶっ倒して、元に戻せばいいだろうが。シオミ。迷うな!」
「
レイトの姿をしたムゲンが、レイトの声で言った。
「分かってて、ムゲンに力を貸したの? バカなんだから」
モモエは、
『
「手出しはさせません」
シオミの
「話し合いは
すこし
「何か、
「それでは
データの
カズヤが、モモエに
チホは右手を
「どうすればいいの。わたしに、何ができるの?」
ケンジが
プログラムの
「レイト!」
かばおうとする女性。少年は、
データの
「よし! やれ!」
その前に、ケンジは動いていた。ハッキングに集中。
向かっていた鳥は、モモエが消した。
「頭を
「ケンジ。まさか、お前」
「私は信じています。
うろたえるウタコと、微笑するトネヒサ。
シオミのまぶたが閉じられていく。目を完全につむる前に、
カズヤから手を
モモエが、眠っているシオミを
集中するハッカーたちの
『
「ツクモ」
風に流れていく、女性の
ケンジはデータとして認識している。
「あとは、これをデリートするだけだ」
四人のハッカーが近くに集まる。カズヤとモモエも、隣に立った。
「アマミズは、シオミさんを頼みます」
『いってくるよ』
空中を歩いて移動する、リスのような白いもの。
『ワームごときが、
ムゲンの声で話す、
「クリエイターの世界との
「
トネヒサの言葉を、ウタコが
「なんで、
「できないから。全ての
ウタコが、小さな体を大きく動かした。ツインテールが
「過去の記憶から
データを
「あらら。全部、言われちゃったわね」
「
お互いの目を見ない、モモエとカズヤ。左手と右手を
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