第11話 うかぶ風船は涙を見せない
「どうにも、
午前8時30分。
五つの机が
「なんで、二人の
ウタコは、トネヒサの横に立っている。ディスプレイを
「ハッキングについての
「クラッキングについても、
「甘やかすな! トネヒサ。ガツンと言ってやれ」
「わたしが、ヒーローとして
立ち上がり、
男性の大きな背中から二人に顔を向ける女性が、
「ヒーロー? お前ら、やっぱり」
「そうじゃないって、まえに言ったでしょ。子供の夢を壊したくなかった」
普段どおりに話すケンジ。ウタコの顔が真っ赤になる。
「なんだ、そのセリフは。私は、悪者か」
トネヒサのそばを離れ、自分の席へと帰っていった。
「
「ここの地下にも、通路があったりしないだろうな?」
「それはない。でも、ここを知られている可能性はある」
「狙ったようなタイミングだったもんね。
『できるだけ一人にならずに、
アマミズの言葉に、ウタコの目が細められる。
「たまには、いいこと言うじゃん」
トネヒサが、PCのキーボードとマウスを
「おはようございます。鍵を開きます」
さらにマウスが操作された。
「よう。期待の
歩きながらケンジとチホを見る。たれ目ぎみの
「この方は、
トネヒサが二人に伝える。
「
「ハッキングですか? わざわざ、いらっしゃったということは、よほど重要な――」
「
「ごめんなさい」
ウタコが小声を出す。すっかり
「おや。フウマさんは
「違うぞ。ご近所さんとは仲良くしないと、な」
ギョウタが
「家族構成を考えると、
『
ケンジの
「新人の
うしろに向け手を振る、中年男性。振り返らずに部屋から出ていく。トネヒサの操作で
「
『アマミズには、その
「アマミズは役に立たない、か」
ケンジの発言を受けて、
フウマ
「
『知ってるけど、あんまり話したことないよ』
「その子のおじいさんが、
『そうなんだ。分かったよ。
「
『なんとかして、連れていくよ。待っててね。ケンジさん』
「ありがとう。レイト。それじゃ」
デジタルデータに変換された、ざらついた声が聞こえなくなる。
「えげつないな。お前」
「私たちだけで
「はい」
十歳くらいの子供たちが、白いものに見向きもせずすれ違う。声が遠ざかっていく。
ケンジたちは道路を横断した。カフェは道の東側に面している。
木製で、和風の民家のような外観。看板を立てかけていなければ、店だと
ガラガラと音を立てて、ゴーストパルスの古めかしい引き戸が開けられた。
足ふきマットで止まらない二人が先に進み、トネヒサとウタコが追いかけていく。
床や壁を含め、ほとんどが木製。
カウンター席にずらりと
服の色としての並びは、濃い茶色、クリーム色、藍色、グレー。
「いらっしゃいませ」
白いワンピース姿の、髪の長い店員が現れた。片目が
「学生たちが来るので、少し待ってもらってもいいですか?」
「私は、大人です」
「カップル
「お得? これが
何かに気付いたウタコが叫ぶ。トネヒサのほうを見てから、チホのほうを見た。
音が鳴る。ゴーストパルスの木の引き戸が開いていく。
「こんにちは。
嬉しそうな声を響かせたのは、左腕を
「こんにちは。ハルナです」
「おごってもらえるって聞いて」
淡いピンク色の服の少女と、
「ユズルに頼んで、連れて来てもらったよ」
「とりあえず、座って話そうぜ。レイトからな」
三人が座る。左から、レイト、ユズル、ハルナという順番。その右がケンジ。カウンター席にはまだ余裕がある。
名前を告げる七人。
「シオミさんに
「あら。残念ですね。ちょうど、カップル
微笑む店員。ハルナが
「
ウタコは立腹している。
「
「えっ。ユズル? どうしようかな」
「本当のカップルじゃなくても、
店員の言葉に、今度はチホが
「三人の分はこっちで払うから、とりあえず注文しよう」
何人かの冷たい視線をあびたケンジ。
「何か、フウマさんの力になれることがあれば、
「エミカさんに協力してもらうのは、どう?」
レイトの言葉に、少年少女が反応した。レイトと同じ
「僕にはエミカを助けることができないから、
誰の目も見ずに告げたケンジ。その目を、チホが見つめていた。
「
ハルナによると、フウマはクラッカーの
フウマはネットを見ないという。
まずは
普段着の上にスーツの上着を
アナログな手法に
空になった
「おや? お
ケンジに続いて外を見たトネヒサが
「おい。これは、まずいぞ」
道の上。建物の二階くらいの高さに、北に向かって、
クラッカーの
「
窓際の女性へふれそうな近さに座って、意見を述べたケンジ。
「みなさんは、ここを動かないでください。わたしたちが、なんとかします!」
チホが、強い口調で告げた。セミロングの髪をなびかせて、店の入り口へ向かう。ガラガラと鳴る引き戸。
あわてて追いかけるケンジ。二人を微笑んで見つめているトネヒサと、それを
「なんだ? あれ」
「
「そうだね。おねえさんの言うとおり、ここを出ないようにしようよ」
ユズルとハルナが並んでいて、レイトは二人のあいだから見ていた。店員もカウンターから移動して、外を見ている。電柱の上のカラスは普段どおり。
長身の男性が立ち上がった。左手の手袋を外す。
「あれは
「ちょっと待て!
「さすが
「よし。いくぞ」
「その前に、お
にこやかに告げるトネヒサが、全員分の料金を支払った。
道路の上で、白色の
北へと伸びる道。横から、いくつもの道が
チホのあとを追うケンジは、住民に話しかける彼女を見た。
「
「見えなくなるだけじゃない。
信じていない様子の住民に告げられた、
「ありがとう。ケンジ」
「データの書き換えって言っても
浮かぶ
二人へと、和服の男性が近づいてくる。
「
「大丈夫です。南の、
年配の男性は、チホを信じようとしない。ケンジが、胸のポケットから
「ここのカフェ。ゴーストパルスという名前。近くにいるトネヒサが、
「ひとまず、横道に
「そうですね。この道は通らないようにしてください」
二人に
ケンジとチホは、さらに北へと向かう。
道の南側。
道路の
「もういいだろ。このままじゃ、地面まで届くぞ」
道を通る自動車はない。10個の
「そろそろ、手を離してもらえると、メダルが
「ん? あ! なんで
眉を下げた女性が、ふり払うように右手を動かした。
「店から出る前に、
長身の男性が、胸のポケットに右手を入れる。白い手袋につままれて、青いデータフローメダルが現れた。体の前に出した左手に、メダルを移動。左手の白い手袋は、すでに外されている。
『アウト・オブ・オーダー』
久しぶりに、アマミズが
現実をハッキングし、データの流れを
空を見ながら、メダルを
「おかしいですね。なんの効果もない、ただの目くらましです」
「いいだろ。早く消せ」
「
トネヒサが力を貸すように頼んで、手を
肌に
「何もないぞ。
「こちらも同じです。
空中に、ウィンドウが
ケンジとチホが南へ向かい、トネヒサとウタコに合流。
「あ。フウマさんだ」
小声で告げたウタコが、トネヒサの後ろへ隠れるように移動した。正面から、和服の男性と
「おじいちゃん。
「ん。ああ。
ケンジは何も言わない。チホは隣を見ている。微笑して、トネヒサが
「
「きびしそうなお姉さんが、レイトくんを連れていっちゃった。ユズルくんも一緒に」
「シオミさんか。見つからないように来た、って言ってた気がするし。怒られてそうだな」
たいしたことではないという様子で、
「もう、いいだろう。帰るぞ」
歩き出そうとするフウマを、ハルナが
「同じ方向でしょ。一緒にいこうよ。あと、お礼も」
「ううむ。なんだ。礼を言う。
フウマを
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